高齢者が水分を摂らないと暗い未来がくる
こんにちは、たくろうです。
高齢者って、水分取らないですよね。
飲め飲め飲め飲めと大学の浮かれコンパ並みに煽るんですけど、まあ全然飲まない。そんなんじゃ「ノリ悪い」って先輩に怒られるぞって言うんですけどまあ飲まない。
一説には、高齢者が1日に必要な水分量は1200mlといわれています。
これは3食の食事に含まれる水分以外に必要な量となりますので、純粋に水分だけで1200mlです。
僕らからしたら「ペットボトル2本ちょいか。まあ楽勝かな」となるんですけど、いかんせん高齢者の方々はノリが悪い。
なかなかグイグイっとは飲んでくれないわけです。
今回はそんなノリの悪い後輩みたいな高齢者の
- 高齢者が水分摂らない理由
- 水分を飲むことのメリット
- どうやったら飲んでもらえるか
という点について書いていこうと思います。
高齢者はとにかく水を飲まない
なんなんでしょうね。
僕らからしたら理解不能なまでに水分を取らないですよね。
いや、介護士が理解不能とか言っちゃいけないんですけど。
高齢者が水分を取らないのは、以下のような理由が考えられます。
- トイレに行きたくなるから
- 喉が渇いていない(と思っている)
- 他の事に集中している
「そんなに飲むとトイレに行きたくなるから……」
「トイレに行きたくなるから飲まない」なんて、そんなもん行きゃいいじゃないかと思うんですが、老人にとってトイレまでも一苦労。メロスがセリヌンティウスを助けに走ったコース並みにしんどく感じるんでしょうね。
僕らとしては楽にトイレに行けるように必要に応じて介助に入ったり、掴まれるものをおいたり作ったりするなど安心してトイレに行けるように環境を整える必要があります。
また、メロスもセリヌンティウスを助けに戻る途中に疲労困憊で倒れてしまったけれども、岩間から湧き出す清流を飲んだことによって疲労回復と希望をもったんだよ。だから水を飲もうねと言ってあげる必要があります。
「喉が渇いていないからいらない」
「喉が渇いていないからいらない」というのも水分を勧めるとよく言われますが、そんなわけないんですよ。
もう昼だってのに50ccしか水分とってないとか、喉が渇いてないわけがない。サボテンでももう少し水摂取してますわ。
まあ高齢者になると体の感覚が鈍くなっていくので、「喉が渇いた」という感覚もなくなっていくんですね。
その結果、真夏に家中を締め切ってクーラーも付けず、「寒いといけない」という謎の不安感からカーディガンを2枚重ねでいたりします。減量中のボクサーでももう少し涼しげですよ。
高齢者の「寒い」ってのは、肉が少なくなって保温機能が低下しているのも確かにあるんでしょうけど、わりとこの「寒いかもしれない」みたいな不安感からきていると思うんですよね。
脱線しましたが、基本的に高齢者は感覚が鈍くなっているので、こちらで「じゃあひとくちだけ飲んでみてください。メロスもセリヌンティウスを助けに行く最中にね……」と勧めてあげる必要があります。
他の事に集中している
高齢者に「お茶ですよー、飲んでくださいねー」と目の前にコップを差し出し、応答があったにも関わらずすぐに興味をなくし、食い入るようにTVをみるということがあります。
もう完全にTVに集中しちゃってるんですよね。
この場合、放っておくと3日後までそのままの姿でいる可能性がありますので、隣に座って話をしながらお茶を勧めるなど、こちらに興味を持ってもらう必要があります。
この時にも「昔悪い王様がいて、その王様に『お前の友情とやらを試してやる』と友人を人質にとられた人がいてね……」など、興味を持ってもらう話をしましょう。え? メロスはもういいですか? じゃあお茶飲みましょうか。
水分は認知度の改善に効果あり
国際医療福祉大学大学院の竹内孝仁教授の著書に「水をたくさん飲めば、ボケは寄りつかない」があります。
水をたくさん飲めば、ボケは寄りつかない
BY:amazon.co.jp
竹内孝仁教授によると「体内の水分1%が失われただけでも意識がぼんやりとする=意識障害となる。水分を摂取することで覚醒水準が上がり、認知機能が改善する」とのこと。
確かに介護では「この利用者さん言動が何かおかしいぞ」というときには発熱等の体調不良もそうですが、脱水を疑ってみるという必要があります。
本当に意外と水分を摂って貰うだけでおかしな言動がなくなる場合があるんですよ。
他にも水を取ることにより、にご本人にも介助者にも以下のようなメリットがあります。
- 水分摂取により便通が改善=イライラ感の軽減
- イライラ感の軽減により他の事に興味が向く=食事やリハビリ等をしっかりと行える
- 食事をしっかり摂ることで体力がつく
- 体力がつく=リハビリをしっかり行え、筋力がつき、介助量が減る
- 介助量が減る=自身で出来ることが増え、生活の質も上がる
イライラ感がなくても、それこそ「覚醒水準が上がる=食事やリハビリがしっかり行える」ということなので、やはり水分摂取は大切かと。
逆に水分をあまり摂らないという方向性で考えると
- 水分不足で排便困難=イライラしたり徘徊したり
- 水分不足のため覚醒水準悪し=食事にも興味を示さず注意力散漫
- 栄養がとれないままふらふらと歩き回る
- 転倒=骨折
- 環境が急激に変わり、認知症状が悪化
- 介助量が増え、ご本人も介助者も大変
というような暗い未来が見えてきてしまいます。
メロスもあそこで岩間の湧き水が飲めなかったらセリヌンティウスの元へたどり着けなくて……ってもういいですね。はい。お茶のみましょう。
本人の好み・状態に合わせた水分をこまめに提供
「それじゃあどうやって水分とって貰えばいいのさ!」という話ですね。
「この手法を使えば間違いなくテニスサークルのコンパ並みにベロベロ飲んでもらえる!」という手法は残念ながらございませんので、コツを書いていきたいと思います。
- 本人の好みに合わせる
- 「飲みたくなっているだろうな」というタイミングを逃さない
- 一緒にお茶を飲む
- 「薬のあとの水」は意外と飲んでもらえる
本人の好みに合わせる
- 冷たいものが好き
- 温かいものが好き
- 甘いものが好き
- 緑茶が好き
- 番茶が好き
などなど、その人によって様々な好みがあると思います。
この嗜好にあわせて提供することで、案外ゴクゴクと飲んでもらえることがあります。
カルピスなんかは皆さん好んで飲みますが、あまりたくさんそれだけ飲んでもらうのも体に悪いので適宜提供にしたほうが良いですね。
ポカリスウェットなんかもそこそこ人気です。
また、水分をゼリーに置き換えることで食べてもらえる場合もあります。
「飲みたくなっているだろうな」というタイミングを逃さない
- 朝起きた直後
- 入浴のあと
- 運動のあと
このように、僕らでも水分を飲みたくなるようなシチュエーションでスッと水分を差し出すようにしましょう。
コツはそんなに大きなコップではなく、100cc入るかなーくらいの小さめのもので提供することかと。
やはり「飲みきった」というのは高齢者にも達成感とか満足度があるので、バーで差し出されるショットグラス的に、スッ、クッ、トン! みたいな感じでいきましょう。
飲みきれなさそうでも「あともう半分がんばりましょー」「もうほんの少ししかないから飲みきってください」「もったいないから全部のんじゃいましょう」などの声掛けで飲んでもらえることがあります。
グッと飲んでもらって「もう1杯どうですかー」と杯数で水分量を稼いでもらいましょう。
一緒にお茶を飲む
これはもうそのままで、「羊羹切ったから一緒にお茶飲もう」的な感じですね。
友達とお茶するのと同じ感覚です。
やっぱりボーっとしながらTVみつつではそうそうお茶も進みません。
一緒に話をしてオヤツでも食べることで、楽しくお茶を飲むことができますよね。
「薬のあとの水」は意外と飲んでもらえる
高齢者の方々は大体何かしらの薬を飲んでいます。
その時、ほとんどの場合水で飲むと思うんですが、ニガい粉薬なんかを飲んでる人はわりと全部飲みきってもらえますよね。
しかし、薬が少ない場合ほんの1、2口くらいしか飲んでもらえないことがあります。
この時「しっかりお薬がオナカの中に入るように、もう少し飲んでください」と声をかけると、結構飲んでもらえます。
やっぱり「薬=飲まなきゃ」みたいな認識があるんですね。
「このもう少し飲んでください」からの「あと2口お願いします」「ああ、もうほんの少ししか残ってないので全部飲みきっちゃってください」のコンボで、コップ1杯=120ccくらいはわりと飲みきってもらえます。
まとめ
高齢者が水分をしっかり摂ると
- 認知機能改善
- 排便しやすくなり、日常動作、生活の質の向上に繋がっていく
- 本人も介助者も明るい未来へ
というお話でした。
メロスも水がなかったらセリヌンティウスを結果的に裏切ることになってたしね。
やっぱり水は大事。
高齢者がなかなか飲んでくれなくても、手を変え品を変え、ご本人はもちろん僕らのためにも飲んでいただきましょう。