介護士と警察官の目的は同じ「安全な生活の提供」のはずなのに、この圧倒的な差
こんにちは、たくろうです。
介護士・介護福祉士としてキャリア9年目なんですが、夜勤中に
「介護士と警察官って目的は同じなはずなのに、なんでこんなに待遇が違うんだよ」
とふと考え付いてしまいました。
もちろん危険度や対応しなければいけない案件の幅、対応の規模など、介護士と警察官で違うところはたくさんあります。
しかし、究極的な目的は同じ「安全な生活の提供」のはず。
要は「警察24時!犯罪列島日本!」みたいなTVで酔っ払いの対応とかを見ていると、僕ら介護士と同じようなことしているのに時間も気にせずゴリゴリにマンパワーもあっていいなあ!と思いついてしまったという愚痴です。
介護士と警察官の目的は同じはず
介護士も警察官も業務の目的の本質は「安全な生活の提供」だと思うのです。
警察官はその地域に発生する事件、事案に対応、危険を排除します。
地域を巡回したり、個別の要請に対応したりして、その地域の人々の安全な生活を確保します。
介護士の場合、警察官と同様に生活の危険を排除しますが、僕らは警察官よりも生活に密接に関わっていきます。
僕らが対応する利用者さんの中には単独で歩行が困難な方もいらっしゃいます。
そんな時は「歩く手伝い」をしつつ「転ばないか」「足の力が抜けて膝がガクンとならないか」「ちゃんと前をみて、壁やモノにぶつかったりしないか」等の観察をし、必要であれば危険の排除を行っています。
また、個別の要請(ナースコール)で呼ばれれば対応します。
「トイレに行きたい」「リハビリに連れて行って」「ベッドから車椅子に移りたい」等の要望に、危険を排除し安全確認をしながら対応します。
単独でご飯が食べられない利用者さんには、僕達が横について食事の手伝いをしつつ「ちゃんと噛めているか」「ちゃんと飲み込めているか」などを観察し、必要であれば「おかずを刻む」「飲み物にトロミをつけて飲み込み易くする」といった危険の排除を行っています。
このように僕ら介護士は警察官と同じく、危険の排除をして「安全な生活を提供する」ということを目的としているのです。
介護士と警察官、目的は同じだけど色々と違う
しかし、介護士と警察官は同じ目的をもっているにも関わらず、圧倒的に違います。
対応する相手が違う
警察官の場合
- 老若男女問わず
- 基本的には会話が通じる・成立する
- 酔っ払いの対応などもすることがある
- 会話が通じる分、屁理屈を言ってくる人もいる
- 暴力による身体の危険がある(相手が武装している場合もある)
1番辛いのは「会話が成立する分、屁理屈やゴネをしてくる人もいる」というところでしょうか。
TVの「警察24時」を見ていても、なんかわけのわからない事を言ってきたり、ゴネたり、威嚇してくるような人もいますよね。
こんな人にも根気強く対応しなければならないわけで、本当お疲れ様です。
また、相手が逆上して殴りかかってくる場合もあるわけで、身体の危険を感じる場面もありそうです。
介護士の場合
- 基本的には老人
- 会話が通じない・言語によるコミュニケーションが出来ない方もいる
- 何をするかわからない。行動予測が難しい中で相手の安全を確保
- 暴力による身体の危険、セクハラがある
1番辛いのは「行動予測が難しい中で相手の安全を確保」というところ。しかもそんな方複数名を相手にこちらは単独で安全の確保を行わなければならない場合があるというところでしょうか。
そういった方だと言語によるコミュニケーションが難しい場合が多いので、大体消耗戦になりますよね。
昼にたんまりと寝ているので夜に元気になり、ヒマだから出歩こうとして立ち上がりセンサーコール(ベッドから背中が離圧力の変化を感知しナースコールが鳴るシステム)がくる。介護士はその方の部屋まで行き要望を聞くが「銀行に行かなきゃいけないんだ」等仰る。今は夜中である事を説明するが納得されず、1度トイレに誘導しなんとかベッド臥床してもらう。
また別の同じような方からセンサーコールあり「お通じがでないからトイレに行かなきゃ」と仰るがお通じは3時間前に出ている。説明するが納得されずトイレへ誘導。トイレ終了後のコールの理解がない方なので終わるまでトイレ外で待つが「お通じがでないのよ! どうしてくれるのよ!」など仰る。再度説明するが納得されず。
途中、またセンサーコールあり。先ほどの方が「銀行に行かなきゃいけないんだ」と。「伺いますので少しお待ちください」とコールで声をかけるが耳が遠く、よく聞き取れていらっしゃらない様子。
そのやりとりをトイレに座っている利用者さんが聞き「少し待ってくださいってどういうこと?」など更に興奮される。
というような地獄の様相を呈してくるわけです。
この場合、もう銀行に行くと仰る方は運を天に任せ、目の前にいる利用者さんの対応に専念するしかないわけです。
これが夜通し続くとかはもはやこちらが発狂しそうになりますし、目的の「安全な生活の提供」ってことがそもそも達せられないですよね。
マンパワーが違う
警察官の場合、110番に電話をして、警察官が「人がいなくていけません」なんてことはないわけです。
地域それぞれに派出所が複数ありますし、その上に県警がいるわけです。
通り魔なんかに襲われて命からがら110番したら「ちょっと今人がいなくていけません」なんてありえないわけ。
しかし介護士は実際スタッフが足りていない施設があります。
そしてそんな施設では「人がいないなんてそれはこちら側の理由であって、利用者さんには関係ないから」「効率化とスキルアップでなんとかしろ」という意味のわからない根性論を掲げてきます。
根性論こねくりまわしてないで人員を補充してくださいよ。「いや募集はしてるんだけどなかなか人がこなくてさ」なんて良く言いますけど、それはそちらの理由であってこちらには関係ないですよねって言いたくなる。
介護で人員が足りないと、スタッフも疲弊するし、利用者さんへのサービスの質も低下します。
1件にかけられる時間の余裕が違う
マンパワーが違うということはすなわち1件にかけられる時間の余裕が違うということですよね。
警察官はスピード違反で止めたトラックの運ちゃんがめちゃくちゃにゴネているのを、30分でも1時間でも話を聞き、説得する時間の余裕があります。
それは人員が潤沢にいるため、他の件が起きてもまた別の人間が対応できるという余裕ですよね。
介護士もそれは同様で、人員がいないということは時間の余裕がないということです。
いかにスピーディに作業をするか、いかに効率よくこなしていくか。
確かにそれも大事なのですが、効率やスピードにとらわれてしまうと焦りが生まれ、焦りが生まれると失敗につながります。
僕らの失敗はイコール利用者さんの怪我や最悪死に繋がることもあります。
介護士と警察官との圧倒的な差は、とにかくマンパワー
警察官をみても分かるとおり、「安全な生活の提供」をするためにはとにかくマンパワーが必要だということです。
マンパワーが少なく、焦りや疲れが出てミスをすることで「安全な生活の提供」ができないどころか怪我をさせてしまう可能性があるのが介護士です。
現状、介護度や「利用者:スタッフ」の人数換算で「ウチは人員換算上は人数足りてるから」とかの数値で人員を考えているところがほとんどだと思います。
しかしそれでは「安全な生活の提供」が難しい場合があるというのも事実だと思います。
是非、介護施設の運営をされている方々は数値で考えるのではなく、実際の介護現場の労力から人数を考えていただきたい。
利用者さんに「安全な生活の提供」ができないどころかスタッフも疲弊していきミスも増え、モチベーションも下がる。
少ない人数で運営することで人件費自体は軽くなるかもしれませんが、それ以外いいことないですよ。