高齢者の毎食後の口腔ケアはしないの?介護士としての視点

2019年9月26日介護

こんにちは、たくろうです。

先日、職場で経験年数の浅い介護派遣の方の教育についていました。
利用者さんの昼食が終わり、食後のトイレ誘導・口腔ケア誘導を指導していたんですが、トイレ誘導後そのままベッドへ向かい、臥床介助をしようとしたんですね。

「あれ? 口腔ケアは? 忘れてた?」
と声をかけると

「えっ、口腔ケアするんですか?」
と。

えっ、しないんですか?

高齢者の毎食後の口腔ケアはしないの? 介護士としての視点

口腔ケアを行う目的は以下になります。

  • 口内の清潔を保つ
  • 誤嚥性肺炎の防止
  • 口内のマッサージ

また、口腔ケアを介助する上で介護士に求められることは

  • 利用者さんができることはしてもらう
  • 利用者さん本人の力で口腔ケアができているか

という点になります。

口内の清潔を保つ

これは僕たちにも当てはまることで、歯磨きやうがいをすることで口内を清潔にし、雑菌の繁殖を防ぐということです。
雑菌が繁殖すれば、虫歯はもちろん、口臭の原因にもなります。

また、高齢者の口内は唾液の分泌量が衰えたりしており、自浄能力が低下しています。
自浄能力を補うように、意識的に口腔ケアを行うことが必要になります。

関係ないですけど、たまに地獄から舞い戻ってきたの? ってくらい異常に口の臭いおっさんいますよね。
「タバコ+コーヒー+酒+不摂生+歯磨きしない」くらいのコンボをかまさないと生まれ得ないだろっていう奇跡の口臭。
絶対お前んち4Lの甲類焼酎あるよなって感じの口臭のおっさん。
間違いなく自浄能力が低下しているので、このおっさんも意識的に口腔ケアを行うことが必要です。
なんなら1回歯医者行ったほうが良いかもしれません。

誤嚥性肺炎の防止

これは介護士には馴染みのフレーズですよね。
口内に食べ残しや食べカス・汚れが残っており、それ自体や汚れた唾液を誤嚥(気管に入ってしまうこと)した場合、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

特に冒頭の例のように食後ベッドへ横になる利用者さんの場合、起きている状態より唾液の飲み込みがし辛く、誤嚥のリスクが高くなります。
食後ベッドへ横になる場合は特に注意して口腔ケアを行いましょう。

昔、居室内フリー(部屋の中では転ぶ可能性が低いので、その時点では介護介入が不要な人)の利用者さんが寝ながらチョコ食べてそのまま寝ちゃって、ベッドも洋服もギットギトにした挙げ句に「これどうなってんだ! どうにかしろ!」と僕らにマジギレしてくるのを目の当たりにし、介護とはなんて理不尽な仕事なんだろうと自分の運命を呪ったことがあります。
はい、全然関係ないです。

口内のマッサージ

口のマッサージ

ブラッシングをすることで、口内全体のマッサージ効果も見込めます。
マッサージをすることで口の筋肉もほぐれますし、唾液の分泌を促す効果もあります。
歯だけではなく、歯茎や舌・頬の内側も歯ブラシやスポンジブラシでやさしくブラッシングをしていきましょう。

関係ないですけど、昔繁華街を友達と歩いていて、人が多くて少し離れて歩いていると何故か僕だけやたらと夜のマッサージに勧誘されるという現象が観測されました。
絶対「アッ、アイツチョロソウダネー。コエカケタライチコロダネー」とか思われてたんだと思う。

経管栄養の方の口腔ケアも必須

また、経管栄養で口を使った食事をしない方にも口腔ケアは必須です。

※経管栄養とは
様々な理由で口から食事を取れなくなった方が、鼻やお腹から胃までチューブをつなぎ、直接液体カロリーメイト的なものを流し込むことで栄養を得る方法です。
液体の栄養と半固体の栄養があり、液体は点滴のようにポタポタと、半固体は巨大な注射器のようなものをチューブに接続し押し入れます。

理由は上記3つと同じものになりますが、特に口を動かす・「噛む」という動作の回数が、口から食事をされる方と比べて圧倒的に少なくなりますので、唾液の分泌量も少なくなり自浄能力の低下が著しくなります。
液体の経管栄養の場合、滴下に時間がかかり、ベッドに横になっている時間が長くなりますので、誤嚥のリスクも高くなります。
唾液分泌を促すためにも、マッサージ目的でも口腔ケアを積極的に行っていきたいところです。

口腔ケアは介護士の観察力と声掛けの能力の見せ場

ということで、口腔ケアを「しないという選択肢はないやろ」と鶴瓶師匠も仰っているわけですので、必ず実施してください。

僕は介護とは杖のようなもので、「利用者さんの行動を手助けはするが、できることは自分でやってもらう」ことだと思っています。
「出来ることは利用者さん本人にやってもらう」ことには以下のようなメリットがあります。

  • 認知機能の低下を防ぐ
  • 日常で生活する上での動作をすることで運動になる
  • 健康なまま長生きできる
※認知機能低下とは
記憶障害、失語、失行、失認、遂行障害の症状がでることを指します。
記憶障害
いわゆる「物忘れ」です。
普通の人でも軽い物忘れはあると思いますが、高齢者の場合「数分前の出来事を忘れる」「昼食を食べたことを忘れる」といった体験そのものを忘れてしまうことがあります。
また、本人は「忘れた」という自覚がないのも特徴です。
失語
高齢者の場合、ものの名前が出てこなくなるといった症状が出ることがあります。
失行
運動機能に麻痺などの障害がないにも関わらず、普段行っていた日常動作ができなくなることを指します。
この場合、「歯磨きができない」ということになります。
失認
目や耳に障害が内にも関わらずものを認識できなくなることを指します。
この場合、「目の前に差し出された歯ブラシが何なのかわからない」ということになります。
失行障害
計画や順序立てて物事を行うことができなくなることを指します。
料理ができなくなる、などがあります。

そのため、口腔ケアで僕たちがやるべきことはまず「できるのか?」という観察です。

  • これから歯磨きをするという認識をしてもらう
  • 歯ブラシを持てるか
  • 磨く動作ができるか
  • 本当に磨けているか
  • 磨き残しはないか
  • ぶくぶくうがいはできるか
  • 適切に吐き出せるか

これらの動作の、足りないところを介護士が補うというイメージです。

まず「歯磨きをしますよー」と声を掛けても「バカ! バカ!」と僕らを罵ってくる利用者さんとかは、もうすべてが難しいですよね。
この状態で歯ブラシを渡しても、それで僕らを殴ってくるすらある。
良いですか、これが「失認」です。

磨く動作をやりはするけど、本当に歯の表面を撫でるだけという方もいます。
この場合は

  • めんどうくさくて適当にやっている
  • 認知力の低下、「失行」の症状が出ている
  • 筋力がなくてできない

これらのような、「なぜその動作なのか」という理由を見つけ出す必要があります。

能力はあるのにめんどうくさくて適当にやっているのであれば、声かけでなんとかご自身でやっていただきたいところですよね。
自分の歯じゃないですか、と。あなたがめんどくさい以上に僕らのほうがめんどくさいんですよって話ですよ。あっ、本音が出ちゃった。

失行の症状が出ていたり、筋力がなくなってしまっている場合は僕らで介助をして差し上げる必要があります。

また、ぶくぶくうがいができるかどうか、というのはわりと重要な判断が求められるところです。
飲み込む能力が落ちてきている高齢者にとっては「ただの水」というのも凶器になりえます。
粘度が低ければ低いほど「飲み込みにくい」ものなので、きちんと吐き出しができていないと誤嚥してしまう可能性があるからです。
ぶくぶくうがい自体ができても、そのあとにむせこむ、ということがあれば、今後注意が必要です。

「このやり方で教わったから」「今まで出来ていたから」で観察を放棄してほしくない

介護士の視点

これは口腔ケアに限らないのですが、

「入社時などに先輩にこうやって教わりました」

「こうやれというルールになっています」

という理由で思考停止し、観察することを放棄してほしくないと思っています。

高齢者の身体能力や認知機能は常に変化していきます。

利用者さんを観察することで「ああ、これができなくなったのか」ということを見つけることも僕らの仕事です。
逆にルールで決まっていることでも実はやり方によっては利用者さんの能力を引き出して、ご自身でやってもらえることもあるかもしれません。

「ルールは壊すためにある」ではないですが、実際に利用者さんの能力を見て、判断することが重要です。

高齢者の毎食後の口腔ケアはしないの? 介護士としての視点

口腔ケアをやるべきそのものの理由としては

  • 口内の清潔を保つため
  • 誤嚥性肺炎の防止
  • 口内のマッサージ

となります。

それに加えて、介護という「できることはやってもらい、できないところ補う」という視点から見ることが大切です。

  • やり方・声の掛け方次第で本人が出来るのではないか?
  • 今まで出来ていたことが実はできなくなっていないか?

ぜひ上記に注意して、ケアを行っていきましょう。

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Posted by たくろう