生きているミラ・ジョヴォヴィッチが一番怖い

「生きている人間が一番怖い」という言葉があります。

実態のない、存在すらもよくわからない幽霊や何かよりも、悪意を持った実際に生きている人間のほうが余程恐ろしいというお話です。

たしかに僕は霊感というものは全く持ち合わせていないので、幽霊というものがどんなものなのか、いまいちよくわかりません。

まあよくわからないから恐ろしいという考え方もあるんですが、例えば目の前に呪怨の伽椰子と、193cm105kgでスキンヘッドで筋肉隆々で全身タトゥーで白目向いてヨダレ垂らしながらコンバットナイフをこちらに向けて「ふしゅるるるぅぅ」とか言ってるおっさんと、どっちが怖いですか?
うん、どっちも怖いよね。
どう転んでもいい死に方はしないなってなりますよね。

でもまあワンチャンで言ったら193cm105kgでスキンヘッドで筋肉隆々で全身タトゥーで白目向いてヨダレ垂らしながらコンバットナイフをこちらにむけて「ふしゅるるるぅぅ」とか言ってるおっさんの方が怖くないですか。

伽椰子はほら、よく見るとかわいいでしょ。
ていうか呪いの家に近寄らなきゃ良いわけでしょ。
ムダに家に踏み込もうとするから怒るわけでしょ。

そりゃ自分ちに不法侵入してくるやつがいたら怒りますよ。
わかるわかる。行動原理が理解できる。
伽椰子はある程度節度があるじゃないですか。
倫理観があるわけじゃないですか。

でも193cm105kgでスキンヘッドで筋肉隆々で全身タトゥーで白目向いてヨダレ垂らしながら、っていうか長いからもうこのおっさんのことふしゅるるるって呼びますけど、ふしゅるるるは節度とか全然感じないわけ。

逃げようが何しようが、近づかないようにしようが絶対追いかけてくるじゃないですか。
目についた人間を絶対追いかけてくるんですよ。
そんで体格差からいってもう勝ち目がないじゃないですか。

そのコンバットナイフでなにするのっていったら間違いなく僕のことをメッタ刺しにすること受け合いじゃないですか。それから僕の肉でウィンナーとか作るじゃないですか。「ふしゅるるる」とか言いながら手早くウィンナー作るじゃないですか。

怖い怖い。生きてる人間怖い。
幽霊なんかより生きている人間の方が絶対恐ろしい。

僕は介護施設で働いているんですが、入居型の施設なので夜勤もあるんですね。
そんで夜には当然照明を落として利用者さんにしっかり眠ってもらえる環境を作るんですが、いかに慣れた環境とはいえ夜中の1~2時くらいになると「ちょっと不気味だな」と思うこともあるわけですよ。

まあ正直「不気味だな」と感じる恐怖と15分おきに起き出して「トイレ」って言ってくる利用者さんの恐怖どちらが上かって言われると「トイレ」って言われる方が嫌ではあるんですが、たしかに謎の不気味さを感じることはあるわけです。

僕は霊感は持っていないんですが、特にこの部屋の前にくると何か変な感触があるな、という部屋もあるんです。

そんな話を同僚としていると「俺、霊感ありますよ」とか言うんですよ。
「あの部屋でしょ。いますよ。小さい子が5人くらいいます」とか言い出すんですよ。

お前ふざけんなと。
「いますよ」じゃないんだよと。

こっちは明らかに「嫌だな、怖いな」ってトーンで話してるんですよ。
稲川淳二ばりに顔に下から青いライト当ててる感じで「怖いよね」って話をしてるんですよ。

そんな怯えてる人間に対して「そりゃ変な感じするよ。いるもん」じゃないんですよ。
お前ナウシカみたことないんかと。ナウシカが怯えてるキツネリスのテトに対して「ほら、怖くない」って安心させてるのみたことないんかと。
こっちはあれを求めてるわけ。共感と安心を求めてるわけ。

あのシーンでナウシカが「オラア!」とか言ってテトを鷲掴みにしてたらどうなると思ってんの。完全に「ニンゲン、オソロシイ」ってなるでしょ。子々孫々まで「ニンゲン、オソロシイ」って伝承されるでしょ、キツネリス界隈で。

そういうことなんですよ。
小さい子5人よりなによりお前が恐ろしいわって話なんですよ。
怯えてる同僚を追い詰める、生きてる人間が一番恐ろしいわって話なんですよ。

そんな恐ろしい職場で働いているんですが、先日もまた、こんな出来事があったんですよ。

利用者さんの中には、様々な理由で食べ物を飲み込む機能が衰えてしまい、口から栄養を摂取できない方もいらっしゃいます。

そんな方には「経管栄養」と言って、胃に直接栄養剤を流し込んで栄養摂取する方法を取ることがあります。

この経管栄養は、お腹に穴を開けて管を通す「胃ろう」という形で栄養を流し込む方法と、鼻の穴から胃まで管を通す「経鼻栄養」という形で栄養を流し込む方法があります。

どちらの場合も栄養を注入するための管が15cm程出ている状態になります。
胃ろうの場合はお腹から、経鼻栄養の場合は鼻からですね。

この経管栄養は、どうしても口から食べることができなくなった若い人に一時的に施術し、しっかりと栄養を摂取しながらリハビリをしてまた経口摂取を目指す、という分には未来があって良いんですが、高齢者ともなるとこれからもう終わりまで口からモノを食べることなく過ごすということも多々あります。

口からモノを食べなくなると、口周りや喉の筋肉も衰えますし、指先や腕の筋肉も衰えます。認知症状も進行します。

そうなってくると、何故自分の腹や鼻から管が出ているのか理解できないという状況になったりするんですね。

特に鼻の場合、めちゃくちゃ気になるわけですよ。

もちろん施術する時に利用者さんに説明をするんでしょうけど、覚えていなかったりそもそもあまり理解ができなかったりするわけです。

そんなわけで、本人からしたら気づいたら鼻から管が出てるって状況なんです。
まあ気になりますよね。
なんだこれってなりますよね。
触ったりしたくなりますよね。

なので、僕たち介護士は利用者さんがその管を引き抜かないように注意を払わなければならないわけです。
しかしまあ、24時間その人だけを見守っているわけにはいかないわけで。当然部屋に利用者さんだけ、という状況もうまれるわけです。

先日その経鼻栄養の利用者さんの見回りに行ったわけですわ。

そしたらね、まあ、もうおわかりかとは思うんですが、ぶっこ抜いてるわけ。経鼻の管を。
鼻から出てる管を引き抜いてるわけ。

わかりますよ。
気になるだろうなということもわかりますし、この利用者さんはこの管が何のために付いているのかとか、引き抜いたらどうなるかということを理解できていないんだろうなということもわかります。

でも正直なところ、すげー怖いなっていうのが僕の感想なんですよ。

この管、鼻から胃まで通ってるんですよ。
胃ですよ、胃。
豚で言ったらガツですよ、ガツ。

その管をズルズルズルズルっと引き抜くんですよ。
めちゃくちゃ怖くないですか。

なんでそんなことできるの?
途中で冷静にならないの?
最後に万国旗でもついてると思ってるの?

多分、感覚的にはカサブタを剥がすみたいな行為に近いのかなとは思うんです。

僕らでもまだ完全に治りきっていないカサブタが気になって、痛みはあるけど剥がしてしまいたい、みたいな時はあるじゃないですか。

それと同じで、なんかある程度痛いし不快感もあるけど、気になるから取っちゃいたいっていう感覚なんだろうとは思うんです。

でもですよ。
それでもですよ。

気がついたら自分に謎の管がついてる。
よし、取ったろ!
とはならないでしょ。

僕なら「やべえなんか怖いからとりあえずちょっと放っておこうかな」ってなりますよ。
「試しに抜いてみよ」とはならないですよ。

まあね、それでもね、利用者さんはもうよくわからなくて、ただただ気になって触っているうちに引き抜いてしまったんです。
1本だけ、よくわからずに抜いてしまったんです。

仕方がない。
たしかに恐ろしいけど、仕方がない。
よくわかんなくて1本管を引き抜いてしまっただけだもの。仕方がない。

でもミラ・ジョヴォヴィッチは違う。

映画「バイオハザードⅡアポカリプス」でのミラ・ジョヴォヴィッチは全然違うんです。

この映画は主人公アリス=ミラ・ジョヴォヴィッチが見知らぬ病院で目が覚めるところから始まるんですが、頭や体にすげー大量の管が付いてるんですよ。
目が覚めて、起き上がろうとしたときに身体中に大量の管がくっついてるのに気づくんです。

そっからですよ。
何を思ったのかミラ・ジョヴォヴィッチはその管全部抜いていくんですよ。
なんか「んんぐうああああ!!」みたいなこと言いながら、すげー雑に引っ張ってぶちぶちぶちぶち抜いていくんです。
え? なんで? なんでそんなことするの?

めちゃくちゃ怖くないですか。めちゃくちゃ怖くないですか。
もう1回言いましょうか?
めちゃくちゃ怖くないですか。

見たことあります? このシーン。

体に管ですよ、管。
体に管。
しかも体に電気流してコリをほぐすやつみたいなペタッと貼り付けるタイプじゃないんですよ。見た感じ全部先っぽに針が付いてるんですよ。
それが! 体や! 頭!!に! ぶっ刺さってるんですよ!!

しかもしかも、何のためについてるのかわからないんですよ?
抜かないでしょ。
普通抜かないでしょ。

めちゃくちゃ怖い。めちゃくちゃ怖い。
もう1回言いますね。
めちゃくちゃ怖い。

僕なら「やべえなんか怖いからとりあえずちょっと放っておこうかな」ってなりますよ。
一応病院だし、なんか抜いたらマズいやつだよねって考えてとりあえずナースコールですよ。

ワンチャン引き抜くにしたって、1本1本慎重に厳かに、儀式でも執り行うかのようにゆーっくり抜きますよ。

でもミラは違う。
「んぐううああああ!!」とか言って「ふしゅるるる!」みたいなこと言ってブリンブリンと破竹の勢いで管を抜く。
僕の腰も抜けるかと思ったわ。

伽耶子とか絶対そんなことしないからね。
あの子節度あるから、なんかよくわからない管が体についてたら「とりあえずナースコールしてみようかな」って考えると思う。
とりあえず抜くか! とはならないと思う。節度あるから。

ほんとミラ節度なさすぎ。
1本だけとかじゃなく、十数本単位で引き抜くとかマジでやめた方がいいと思う。
怖すぎる。
とりあえずナースコールした方がいいと思う。

ほんと人間怖い。

人間怖いっていうかミラ・ジョヴォヴィッチが怖い。
生きているミラ・ジョヴォヴィッチが一番怖い。

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日記

Posted by たくろう