【ネタバレ】映画ハクソー・リッジ感想

第二次世界大戦中、アメリカ軍に「ハクソー・リッジ」と名付けられた沖縄の「前田高地」での衛生兵デズモンドの活躍を描いた作品。

デズモンドは敬虔も敬虔、めちゃくちゃに信心深いキリスト教徒なんですけど、幼少期の経験から、ちょっとなんていうか、ごくごくマイルドに言ってもイカれてるとしか思えない行動を取るんです。
でもそのイカれ具合が突き抜けると、「人間ってこんなにもすげぇことになるんだ」ってお話でした。

【スタッフ】
監督:メル・ギブソン
脚本:ロバート・シェンカン、アンドリュー・ナイト

【キャスト】
アンドリュー・ガーフィールド(デズモンド・ドス)
サム・ワーシントン(グローヴァー大尉)
テリーサ・パーマー(ドロシー・シュッテ)
ヴィンス・ヴォーン(ハウエル軍曹)

 

幼少期~志願兵へ。デズモンドさん、ちょっとアブない

デズモンドの家族構成は、退役軍人でアル中の父親と、愛情深く敬虔なキリスト教徒の母親、そして弟のハルの4人。
幼少期、ハルと喧嘩になり、レンガでハルの頭部を殴打。瀕死の重傷を負わせてしまいます。
キリスト教徒のデズモンドはその時「やべえ人殺しかけた。あっぶね。殺人はキリスト教における最大の罪だからもう人は殺さないお!」と誓います。
こう書くとデズモンドは息をするように殺しをするキチガイみたいなんですけど、父親のせいでちょっと家庭環境が複雑だっただけで至って普通の少年です。きっと。た、多分。ていうか弟君死んでないですし。瀕死になっただけで奇跡の生還してますし。

それから月日が立ち、青年となったデズモンドは、たまたま車に轢かれて重症を負った人を助け、病院に搬送。そのとき医者に「君のおかげでこの人は助かった。よくやった」と言われ、人を助けることに快感を覚える変態となります。

この病院で偶然出会ったのが、後の妻となる看護師のドロシー。

このドロシーってのがまあめちゃくちゃかわいいくてですね、完膚なきまでに一目惚れしたデズモンドは猛アタックを開始。
その惚れようはものすごくて、一緒に映画を観に行ってもろくすっぽ映画を観ず、ニコつきながら常にドロシーの顔ばかりを見るレベル。完全に変態。めちゃくちゃキモい。
自分たちの座る前列のカップルがジャプジャプにディープキスしてたんですけど、それを見たデズモンドは多分「フヒヒィ。拙者もドロシー殿とちゅっちゅしたいでござる」とか考えたんでしょうね。ニコつきながらドロシーを見て、ディープキスを見て、ドロシーを見て、とやってることが完全に犯罪者。めちゃくちゃキモい。映画見ろよ。なんでこんなやつがドロシーとデートできてんだよ。

そんで映画を観終わって、いったいどういう思考回路してんのか全然わからないんですけど、いきなりドロシーにキスするんすよ。視聴者ドン引きよ、ドン引き。やってること完全に性犯罪だからね。女性性の蹂躙だからね。こんなの絶対ドロシーにビンタされて「最低! Twitterに書き込むから!」みたいなこと言われるわ。
でも何故かドロシーはまんざらじゃない感じ。え? なんで? アメリカってそういう国なの? 一緒に映画観たらセックスOKみたいな国なの? 自由の国ってそういう意味なの?

そんなちょっぴりオサセの雰囲気をかもしているドロシーと、何がどうなってそうなるのか全然わからないんですけど何故か婚約までこぎつけたデズモンド。

お前絶対この子逃しちゃ駄目だぞ。お前みたいな変態の性犯罪者と結婚してくれるこんなかわいい子は今後何回転生しても出会えないからな。絶対ドロシーを幸せにすんだぞ。

とか思ってたんですけど、時代は第二次世界大戦が激化の一途を辿っているとき。デズモンドはアホなので「みんな戦争行ってるから僕も行くゥ!」とか言い出すんです。なんやこいつ。

志願兵として訓練に参加。「銃? 宗教上の理由で持てないっすwww」

そんなわけで志願兵として訓練に参加することになったデズモンド。
当然銃を扱う訓練にも参加することになるんですけど、「僕、宗教上の理由で銃持たないっす。人を助けに行くんで。人助けに銃なんかいらないっしょ?」とか言い出すんです。
多分、弟を殺しかけた時に不殺の誓いを立てたから、いくら戦争とはいえ人は殺さないっすってことなんでしょうね。

しかしそんな話がまかり通るわけもなく、当たり前に軍曹とかに「じゃあお前が攻撃されたらどうすんだ?」とか言われるんですけど、「ちょっと何言ってるかわかんないっす」みたいなこと言うんです。なんやこいつ。
ていうか一応銃持っておけば良くない? 護身用として持っておけば良くない? 剣心ですら逆刃刀持ってるんやで。

そんな感じでわけのわからないこと言ってるんで、軍曹とか部隊の仲間とかに煙たがられて、理不尽な仕事を押し付けられたり、寝てたらボコられたりとかするんです。
そんな辛い環境でも頑なに「僕、銃持たないっす。他のことは全部やります」という信念を曲げない姿に、なんとなくみんなに認められ出します。

そんで更になんやかんやあって、わかりあえた仲間たちといよいよ沖縄の戦場「ハクソー・リッジ」へ。
もうなんかまさにこの世の地獄といった様相のめちゃくちゃな激戦区なんですけど、デズモンドは頑なに信念を曲げません。僕なら銃30丁くらい持ちたいと思うのに、完全に丸腰で戦場へ。なんやこいつ。こわ。

なんやかんやあって、一度はアメリカ軍がハクソー・リッジの占領に成功するんですけど、日本兵のアパッチ魂に満ち満ちた鬼のような反撃にあい、退却を余儀なくされます。

神託によりデズモンド覚醒。人智を超えた力を発揮する。

死をも恐れぬ日本兵の禍々しい猛攻撃からの退却中、当然ながら負傷する兵士がワンサカ出ます。丸腰デズモンドは衛生兵として仲間たちに応急処置をしていくんですが、ついに部隊の仲間が命を落としてしまいます。

それを目の当たりにしたデズモンドは「僕はいったいどうしたらいいんですか」と神に問いかけます。

命のやり取りをする戦場、仲間の死を目の当たりにしたショック。その極限状態の中「どうしたらいいんですか……」とうつろに神に問い続けるデズモンド。

「どうしたらいいんですか……どうしたら……。せや! もっと人を助けたろ!!」

と謎の神託を受け覚醒。
猛然と負傷兵を助け出します。

その助け方ってのがまたすごくてですね、戦場を飛び回って負傷兵を見つけるじゃないですか。そしたらその負傷兵を自軍のきわの崖まで引きずってくるんです。んでそっからどうすんのかなって思ったら、ロープで崖下の自軍へ降ろすんすよ。
エグいエグい。こんなもんマトモな人間の体力でできるわけない。1人2人やったらもう動けないよ普通。

でも神託デズモンドは完全にキマッてるんで、完全にハイになってるんで、なんか熟練の作業員がライン作業でもしてんのかってくらいの勢いで、負傷兵を引きずってきては崖下に降ろし、引きずってきては崖下に降ろしという作業をゴリゴリに繰り返します。

そんで崖下で命令待機してた仲間が崖から負傷兵が降りてくるのを発見して「親方! 崖から負傷兵が!!」となり、降りてきた負傷兵をズンドコ野戦病院へ運びまくります。

これを昼夜問わず2日間(!)続けた崖の上のデズモンドはもはや疲労困憊。崖の上のポニョみたいになってるんですけど、挫けそうになるたび「神よ、もう1人助けさせてください」つって戦場に戻るんです。
で、もう1人助けてきたら「神よ、もう1人助けさせてください」
で、また1人助けてきたと思ったら「神よ、もう1人」
見てるこっちが「もうええんちゃう?」と思っても「神よ」
怖い怖い怖い。もうやだこの人。こっちが神に祈りたくなる。

結果、助けも助けてその数72人。
72人すよ、72人。1人で72人を助けたのよ? 72回、150m先の崖下にロープで人間を運んだんすよ? いつ自分が日本兵に撃たれるかもわからない状況の戦場から引きずってきてよ? ありえないでしょ。

しかもこれ、驚きなのが実話をもとにした作品らしいんですよ。
嘘でしょ。150m崖下まで人間を72回運ぶとか無理でしょ。腕とかモゲるでしょ普通に。
しかもそのあとも戦場に幾度となく参加して、4回負傷してようやく後方へ回されたらしいんですよ。なんやこいつ。ターミネーターかな?

信仰は押し付けるものじゃなく、自分の柱として持つもの

デズモンドはキリスト激推しすぎてちょっと頭がおかしくなったんだと思うんですけど、この人の良いところはその信仰を他人に押し付けないところだと思うんです。

昔、今の仕事を始めたばかりの頃、同期に飲みに誘われたんです。
大喜びで「ウヒョー酒が飲める! 行こう行こう!」ってなったんですけど、なぜか場所の指定が有楽町。
有楽町って別にわざわざ飲みに行く街って感じでもないし、職場が近いわけでも僕と同期の家が近いわけでもない。
なんだろうな、とは思いつつも「まあ行きたい店があるのかな」程度でホイホイ有楽町に行ったんですよ。
んで、同期と合流したら「先輩が関わってる展覧会があって、飲む前にちょっと寄っていいか」みたいなことを言い出したんです。
「あー、集客しろって言われてたから有楽町集合なのかー」と思いつつ、まあ別に断ることもなかったんでその展覧会に行くことにしたんですよ。

控えめに言ってその展覧会はめちゃくちゃつまらなくて「早く酒飲みてえなあ」と思いながらさも興味ある風にみていたんですけど、まあ当然、同期の先輩ってのと会いますよね。
「おー偶然! 久しぶり! 元気だった?」みたいな会話をする同期を横目に、僕はすげー嫌な予感がしてたんですよ。

その予感ってのが、久しぶりに会ったらまあ「一杯やる?」みたいな流れになるじゃないですか。でも、同期からしたら先輩だとしても、僕にとってみればガリガリに他人なわけですよ。アンガールズ田中似のただの他人なわけですよ。
僕は同期と酒を飲みに来たわけであって、アンガールズ田中似の他人と酒を飲むためにはるばる有楽町まで来たわけじゃないんですよ。

これはもうその先輩、アンガールズ田中似の先輩の良心に掛けるしかない。
「同期は友達と飲むついでに展覧会に来たわけだから、邪魔するのは悪いな。挨拶だけして別れよう」と思ってくれる方に掛けるしかない。

なあわかるだろアンガールズ田中。お前だってアカの他人のおっさんと酒のんだって別に楽しくないだろ? な? わかるよな?

と、祈るような気持ちで同期とアンガールズ田中のやりとりを眺めてたんですけど、アンガールズ田中って多分ちょっと狂ってるんでしょうね。
「久しぶりだし、俺んちで酒飲もうぜ!」とか言い出したんですよ。

なんでだよ!! 百歩譲って居酒屋ならまだわかるよ!! なんでよりにもよってお前んちに行くことになんだよ!!! 斜め上すぎんだろ!!! 行きたくねえよバカ!!!!

もう、もうこうなったら同期! 頼みの綱はお前だけだ! わかるよな!? お前にとっては先輩なんだろうけど、僕にとっては出会って5分のわけのわからないおっさんなんだ! そんな奴の家に行って楽しめるわけないってわかるよな!? 断れ! やんわり断れ!!!

「あ、いいんすか? 行ってみたいなあ。たくろうさんいいすか?」

いや良いわけねえだろ。
ていうかこっちに振ってくるんじゃねえよ。この構図で断ったら僕完全に悪者じゃん。この状況から差し障りなく断るとか陰キャコミュ障の僕がそんな高度な技術持ってるわけ無いじゃん。

もう受け入れるしかないよね。「あ、僕もお邪魔していいんすか?」って言うしかないよね。

そんな感じでガッチガチに嫌な予感が的中して、ほぼ拉致みたいな感じでアンガールズ田中の家に連行されたんですよ。死にたい感じで連れ込まれたんですよ。

そしたらですね、そのアンガールズ田中の奥さんって方がいらして、なんの間違いなのかわからないんですけどこの奥さんがまーめちゃくちゃかわいいんすよ。小倉優子と吉岡里帆のハイブリッドみたいな、マッドサイエンティストが地下室のカプセルで作り出したみたいなレベルでかわいいんすよ。アンガールズ田中と不釣り合いにも程があるレベルでかわいいんすよ。

急にお邪魔した僕みたいな得体のしれないやつにも「いらっしゃい(はぁと)」みたいな感じで接してくれるし、なんかわかんないけどたこ焼きパーティーの準備されてるし、ガリガリ缶ビール出してきてくれるし。
なんか当たり前のように普通に飲み会が始まって、たこ焼き食ったりビール飲んだり小倉優子と吉岡里帆のハイブリッドが作ったっていうめちゃくちゃ美味い煮物食ったりとかしてたんですよ。

でもなんだろう、何か腑に落ちない。
なんでタコパの準備されてるんだろう。タコパするよって日にいきなり他人が来るとか嫌じゃないんかな。旦那の後輩とか得体のしれない僕みたいなキモメンがいきなり来ても驚きもせずゴリゴリビールとか出してくるけどこの人菩薩なんかな。
菩薩って言えばなんでリビングのど真ん中に仏壇があるんだろ。めちゃくちゃ邪魔じゃん。

とか思ってたら、アンガールズ田中がおもむろに「たくろう君、人生ってうまくいかないよね?」みたいな、明らか初対面の人間にするような話じゃない重めの話題を振ってきたんですよ。
わけもわからず「ええ、まあ……」とか答えてたら「そうだよね。わかる。顔を見ればわかる。どうだろう、自分を救うために1日1回、祈ってみない? 祈れば救われるんだ。救われたいしょ?」とか言い出すんですよ。

もうね、あぁ~……ってなったよね。

同期のファーストネームが特定の政党の支持団体である宗教法人の会長と同じであること。
不自然にアンガールズ田中の自宅に連れ込まれたこと。
小倉優子と吉岡里帆のハイブリッドの、まるで「訪問者がある」とわかっていたかのような態度と準備。
リビングのど真ん中、明らかに生活に邪魔な位置に鎮座する仏壇。

「そうか」ってなりましたわ。
「そうかそうか」って全てがつながりましたわ。

最初から僕を勧誘するために、全てが仕組まれていたわけね。
茶番につきあわされて、最終的に見ず知らずのアンガールズ田中に「人生がうまくいってない顔してるね」って辱めを受けるために僕は今日ウキウキで有楽町に来たわけね。

ほんと人生ってうまくいかねぇわ。お前の言う通りだわ。
ていうか僕は今日すでに2回ほど「お前と飲むことになりませんように」って祈ったのに全然救われなかったんですけどどういうこと? 規定量以上に祈ったらダメなん?

ほんとにね、デズモンドを見習ってほしい。
デズモンドはドロシーに「銃を触らないなんて、そんなのはあなたのプライドが邪魔しているだけでしょ」と言われ「そのプライドこそが大切なんだ。プライドは信念であり、信念を曲げたら僕は僕じゃなくなる」と答えます。
信仰はいつしか信念となり、信念はいつしか自分自身となるんでしょうね。

ほんとね、信仰は人に押し付けるものじゃないわけ。自分のなかに柱として持つものなわけ。
ていうか「救われる」とか気軽に言うんじゃないよと。デズモンドがどれだけ苦労して人を救ったかわかってんのかと。戦場で武器を持たず72人救ってから言えよと。

ほんとひどい目にあった。
信仰を押し付けるやつほんと嫌い。

まあ、小倉優子と吉岡里帆のハイブリッドっていう現実世界のエラーみたいにかわいい人が見れたのだけが救いでしたわ。

あ、ハクソー・リッジはAmazon Prime Videoで視聴できますんでよかったらどうぞ。



ハクソー・リッジ(字幕版)

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Posted by たくろう