ただ生き残ることを目標にする

死にたいなあって思うことって、あるわけですよ。
アラフォーで中肉中背、エロゲーのモブキャラみたいな体型のおっさんでも、死にたいなあって思うことってあるわけです。ミニオンでいうところのデイブみたいな顔と髪型したおっさんでも、死にたいなあって思うことってあるわけです。

まあほら、若い女の子なんかがさ、「ぁたしもぅだめ……しにたぃ……」とかいう分にはですよ、まだなんかこう、華があるじゃないですか。まだ瑞々しい花が手折られるようなやるせなさを感じるじゃないですか。
でもこちとら完膚なきまでにおっさんですからね。見まごうことなくアラフォーですからね。こんなおっさんが「しにたぃ……」とか言ってたところで「ふぅん。死ねば?」ってなもんじゃないですか。しおれた花を手折ったところで「まあほら、もう枯れてるし」みたいな感じじゃないですか。おっさんの希死念慮って完全にそれじゃないですか。

でもまあ、死にたいって思ったところで、そう簡単には死ねないわけですよね。
死にたいなーって思っても、じゃあ実際行動に移すぜ! ってなると色々大変なわけですよ。死ぬ方法自体はたくさんあって、電車に飛び込んでみたり、車に突っ込んでみたり、どっかから飛び降りてみたり、首吊ってみたりとか、パッと思いつくだけでまあそれなりにでてくるわけですけど、それを実行しようと思うと結構なんすよ。結構結構なんすよ。

電車に飛び込むっつっても、電車で轢死ってめちゃくちゃ周りに迷惑がかかるじゃないですか。まず電車の運転手さん、すっげえ気分悪いですよね。すっげえ気分悪いし、ワンチャン衝撃で運転手さんの身に危険が及びますよね。
電車のダイヤだってめちゃくちゃ乱れるわけじゃないですか。警察呼んだりとか、轢いた人体を片付けたりとか。もし車両に傷があればその車両自体が使えないから一旦お客さんを降ろして、別の電車を用意して、とかやるわけですよね。めちゃくちゃ大変だし、乗ってる人もめちゃくちゃ迷惑。
まあ死んだあとのことなんてしったこっちゃないね! のスタンスで逝ってもいいんですけど、なんか意外と電車で轢死って難しいらしいし、相当うまく轢かれないとなかなか死ねなかったりするらしいじゃないですか。よくわからないんですけど、いい感じに頭とかを潰してもらわないと即死はできないらしいんですよ。いや無理でしょ。電車が来た! ってタイミングで颯爽と線路の上に降り立ち、的確にレールの上に自身の頭部を載せ、ずれないように両手両足でしっかりと踏ん張り、目前に迫る車輪の恐怖に臆することなく頭を踏み潰させる。こんな豪胆な身体能力と精神力があればあんたどこでもやっていけるよ。
ここまでの行動をとって、それでも失敗しましたってなるともう完全に悲劇ですよね。
めちゃくちゃ痛い思いして、めちゃくちゃ色んな人に迷惑をかけて、結果体に重大な障害を残して生き延びちゃったって場合、マジで目も当てられないわけですよ。

そう。自殺って一撃で必ず死ねれば良いですけど、死ねなかった場合本当になんかこう、残念な感じになるわけですよ。
投身自殺してみたら両足なくして生き残っちゃったとか、車に突っ込んでみたら全然死ねなくて痛いだけで突っ込んだ車の人に損害賠償を支払うだけの人生になったとか、むしろ自殺する前より死にたくなるような人生のコースになる可能性があるわけですよね。
自殺って初回で必ず成功させなければいけないわけじゃないですか。初めてのトライで一発オーケーを叩き出さなければいけないわけじゃないですか。でも実はそれって、人生で初めてマリオ1をプレイして1回も死ぬことなく全クリするみたいなレベルで難しいんじゃないの? って思うんですよ。自殺した人ってそこそこ報道されてたりするけど、あれは氷山の一角で、実はその後ろには2倍3倍の人たちが自殺に失敗して後遺症に苦しんでいたりするんじゃないの? 自殺って実は難易度高いんじゃないの? 初めての自殺を完璧に遂行するのって無理ゲーなんじゃないの? 初見殺しってやつなんじゃないの?

そう考えてみると、「まあ……死にたいは死にたいけど、自殺はちょっと難易度高そうだし、簡単に死ねなそうだからとりあえず生きるか……」ってなってくるんですよね。

ていうかそもそも「死にたい」って思うのは、もとを辿っていけば大体対人関係に行き着くと思うんですよ。
人間社会で生きていく上で、他人との関わり合いの中で苦手な人がいたり、自分が劣っていると感じたりするから「死にたい」とか「生きていても意味がない」とか思ったりするわけじゃないですか。
でも、よく言うように「他人と比べる」ってことをしだすと、それこそ上を見たらきりがないわけですよ。
「この人より自分は劣っている」から「生きていても意味がない」とか「死にたい」と考え出すと、それは究極「自分以外誰もいない世界で生きていたい」ということになるんですよね。
バガボンドという宮本武蔵の半生を描いている漫画があるんですけど、武蔵は最初天下無双を目指すわけなんですよ。
「誰よりも強い」「自分が最強だと証を立てる」と。
でもある時「天下無双だと証明するには、自分以外の人間を全て斬り殺さなければならない」と気づくわけです。
そりゃそうですよね。「天下に自分と並ぶ者のない剣豪になる」ということは、自分以外に誰かいたらそいつと戦って勝たなければならない。でなければ自分が本当に天下無双なのかという証明ができない。そして天下無双の証を立てたときには、その証を見せる人間は誰もいなくなる、と。
だから誰かと比べる必要は、まあないこともないですけど、それで自分が生き辛くなるくらいなら誰とも比べることはないと思うんですよね。

そんで生きている意味ってのも、多分、人間って生きているだけで誰かしらに迷惑、というか、良くも悪くも影響を与えるもんなんですよね。

例えば電車に乗って自分が座席に座れた。もうそのことだけで他の人に影響を与えているわけですよ。だって自分が座席に座ったことで座れない人が出てくるわけですから。
自分が座席に座ったことで立って電車に乗らざるを得なくなった人に少なからず影響を与えているわけです。
そしてもしかしたら自分が座ったことで立って電車に乗った人は、電車の揺れで隣の女性と一緒に倒れ込んでしまうかもしれない。
「あっ、すいません! 大丈夫ですか? 怪我はないですか?」
「痛たた……。すいません、大丈夫で……。たっちゃん?」
「え……? めぐみ? ど、どうしてこんなところに?」
「たっちゃんこそ、鳥取に島流しになったって……」
「それが鳥取で三徳山の投入堂の修繕を手伝ったことで恩赦を受けて、今日東京に還ってきたところなんだ」
「……たっちゃんのバカ! どうして最初に連絡をくれないの!?」
「……ごめん。俺のことなんて、めぐみに思い出させちゃいけないと思って……。めぐみの人生には、もう俺は関わらないようにしようと……」
「バカバカ! 私はずっと待ってたんだから! たっちゃんが帰ってくるのをずっと、ずっと待ってたんだから!」
「めぐみ!」
「たっちゃん!!」
みたいなことが起こるかもしれない。
自分が座席に座ったことで、こんな奇跡が起こるかもしれない。
まあこんなバカみたいなことは起きないにしても、人間は生きているだけで、それだけで意味があるんです。

先日もAPEXをやっていたんですけど、ガントレットに降りたんですよ。1パと被ってたんですけど、初動でなんとかアーマーと武器が手に入ったんでとりあえず建物の屋根に登ったんです。APEXって基本的に高所が強いポジションなんですよ。高所だと敵の動きが把握しやすいし、敵の攻撃の射線を切りやすい。
クソ雑魚床ペロ勢でどう動いて良いのかよくわからないんで、とりあえず強ポジと言われている高所を取ろうと屋根に登ったんです。
そしたらジャンプパッドで敵のクリプトがズバンと屋根に登って来やがってですね、打ち合いになったんです。
ガントレットの建物の屋根って高所ではあるんですけど、遮蔽物がまったくない完全な平地なんですね。だもんで、登ってこられたら完全にフェアな状況。エイムと回避能力が試される状況になるわけです。
ただでさえクソ雑魚な僕は完全に錯乱してですね、初めてエヴァに乗ったシンジ君みたいになりながら「ああああああああああ!!!」って銃を打ちまくっていたわけです。
そしたらガリガリに被弾しながらもなんとか敵も僕と同じくらいの体力に削ることができてですね「おっ、これはいけるのか!? やれるのかい!? 倒せるのかい!? ああん!?」みたいな、なかやまきんに君が大胸筋を動かす時みたいなテンションになり、アドレナリンがドパってる状況になったわけです。
そこで敵が逃げるために高所から飛び降りて行ったんですけど、僕は完全にAPEXがキマってる状態だったので「逃さないよォ!!」とばかりに敵を追いかけていったんですよ。
そしたらまあ、案の定ですよね。
案の定打ち負けて惨殺されましたよね。

冷静に考えれば、敵が高所から逃げた時点でまずは回復をするべきだった。「あと少しで敵を倒せる!」とバカみたいな功名心にとらわれず、自分も半死半生なんだから冷静に回復をするべきだったんです。

APEXは3人組20チームのバトルロワイヤルで、自分たち以外のチームを倒し、最終的にチャンピオンになることが目的のゲームです。
こう書くと「自分たち以外の敵をとにかく殺していけばいいんだな!」と考えがちなんですけど、実はそうではないんです。
このゲームで大切なことは「とにかく生き残ること」なんです。

何故ならば、全チームが基本的には3人1チームで動いているので、僕みたいな功名心に囚われた下手くそが「ンぎぃ! 敵をやっつけるゥ!!」とか言いながら敵を打ち合って当然のように殺されてしまうと、僕のチームは2人でゲームを続けなければいけなくなります。
救済措置を取ればゲームに復帰することはできますが、そのためにはチームメイトに負荷がかかります。
つまり、チームメイトが殺されると自分のチームは不利になるんです。
逆にいうと、3人全員が生き残っているというただそれだけで相手のチームに圧をかけることができる。

また、不用意に戦闘をしてしまうと、その銃声をききつけた他のチームが漁夫の利を得ようと集まってきてしまいます。
戦闘になると僕はクソ雑魚のガバガバエイムなので、いの一番に荼毘に付すことになります。
そうなるとやっぱり自分のチームがチャンピオンを取ることが難しくなります。

そう、実はAPEXは「如何に不要な戦闘をせずに生き残り、チャンピオンになるか」ということが目的のゲームなんです。

多分これって、現実世界でも同じなんですよね。
人生でも、先述したように「人より優れた人間になろう」とか、「こいつより優秀になってやる」とか考え出すと、人と戦うことになる。
もちろん、自分のモチベーションというか、向上心みたいなもののために人と比べるのは良いと思います。
でもきっとこういう人たちって陽キャじゃないですか。
僕ら陰キャって自分と人を比べるとすぐ死にたくなるじゃないですか。
だからもうね、人と比べなくて良いんだと思うんです。人と戦わなくて良いんだと思うんです。
ただ生きていればそれでいいんだと思うんですよ。
ただ生きているだけで、それだけで意外と人の役に立ってたり、誰かに影響を与えていたりするんですよ。

APEXも人生も、戦いに勝つことが目的じゃないんです。
ただ生き残ること。逃げてもいい。隠れてもいい。ただ生き残ること。生きていることが大切なんだと思うんです。

生きていること。
ただそれだけで誰かの役に立っているんです。

スポンサーリンク

日記

Posted by たくろう