【ネタバレ】映画ザ・ウォール感想
2007年イラク戦争収束時、今にも崩れそうな小さな壁が残る廃村? でのパイプライン? 建造中に作業員や警備員が何者かに襲撃されたので、斥候として米軍のアイザックとマシューズが派遣される、というストーリー。
結論から言うと、変態的な射撃能力を持つ変態ジューバに狙われたドジっ子兵士アイザックのお話です。
いや、アイザックが特別無能であるって描き方はされていないんですけど、明らかにおかしいんですよ。明らかに無能なんですよ。
だってね、マシューズが襲撃された死体の調査・通信機器の回収のために高台の偵察ポイントから廃村(村の面影はなく、遮蔽物もほぼ無いスッカスカの場所)へ向かうんですけど、その時にアイザックが後ろから双眼鏡でカバーするのね。
まあこの時点で2人とも「20時間も偵察して何の動きもないんだから、敵は居たかもしれないけど今はもう誰もおらんやろ」という認識ではあったんですけど、それにしてもね、普通味方の後方支援するなら視野を広く取るじゃないですか。もしかしたら敵が近づいてくるかもしれないんだから、視野を広くしておいたほうが明らかにいいじゃないですか。でもアイザックのやつ、すげーレンズ絞ってるの。マシューズのケツと、敵がいるならそこにしか居ないだろうと思われる崩れそうな壁の一部だけを見てるの。
いやいやおかしいでしょ。後方支援になってないでしょそんなもん。
しかも途中でその双眼鏡が急激にボヤけだすんです。僕は双眼鏡に詳しくないんでどういう原理でそうなるのかよくわからないんですが、なんすかね、レンズを絞る機能がイカれたんすかね、なんか使えなくなるんですよ。アイザックみたいにポンコツなんですよ。
まあまあ、道具の故障はしょうがないじゃないですか。そういうこともありうると考えてしかるべきじゃないですか。それならそれでライフルのスコープでも使うべきなのに、アイザックはなんか双眼鏡を振ったり叩いたりしてるんですよ。いやいやブラウン管テレビじゃないんですよ。分かる? 最近の人、ブラウン管テレビって知ってる? もはやおばあちゃんちにもないでしょうけど、昔のテレビって奥行きがデーンとしててね、映らなくなったときに叩くと何故か直るっていう謎仕様があったんですよ。
そんな太古のTVを修理する時みたいな感じでアイザックが双眼鏡をいじくり回してる間にですね、マシューズが足を狙撃されて動けなくなるんです。
ほれ見たことかと。即座にライフルのスコープで代用してればこうならなかったんちゃうんかと。せめて狙撃ポイントの方向だけでも分かったんちゃうんかと。
んで、それを見たアイザックなんですけど、なんか大慌てでマシューズの元に駆け寄るんですよ。
いやいや、おかしいやろがいと。
確かにマシューズがいる場所は遮蔽がないし、足を撃たれて自力で逃げることができない。逃げるには確かに助けが必要。それはそう。それはそうなんですけど、狙撃されたってことはそこは射線が通っているんです。そして付近に身を隠せる遮蔽物はほぼないんです。僕はAPEXで学びました。射線の通る場所に体を出すな。必ず遮蔽物の近くにいろ。移動するなら遮蔽物から遮蔽物へと移れと。
確かにマシューズは危険に晒されています。でもだからといってお前までホイホイ敵に体を晒す必要ないだろ。何をマトになりに行ってんだ。アホだろ。
そんで案の定アイザックもガンガン狙撃されてんの。案の定アイザックも足撃たれて動けなくなってんの。もう出川哲朗ですよ。お前はバカかって話ですよ。
もっと冷静に、狙撃ポイントから動かずに狙撃手を索敵しつつ、すぐに本部に支援を要請するべきだったんです。1人と負傷者じゃあどうしようもないし、遮蔽もないのに蘇生通るわけないだろ。せめて敵の位置を把握してアーマー割るなりグレ投げるなりしないと無理だろうが。お前はジブラルタルか? 違うだろ? ドームないだろ? あ、すいませんAPEXの話して。
でもそれくらいありえないだろって話なんですよ。こいつめちゃくちゃ無能じゃねえかと。
メタ的には負傷して動けないアイザックと敵の伝説的な狙撃手との壁を挟んだ心理戦というワンシチュエーションに持っていきたいがためのムーブであることはわかるんですけどね。けどねえ。
あとアイザックは以前自分のミスで仲間を亡くしてしまっているという苦い経験があるためにマシューズが撃たれた瞬間「仲間を守るんだ!」と無我夢中になってしまったということもわかるんですけどね。でもねえ、それにしてもねえ。結果お前のミスで死んだ仲間が2人になったじゃねえかと。
そんな感じでどこにいるんだかわからないスナイパーとふたりきりになったアイザック。
このスナイパーがほんともうね、とにかく変態。
何が変態って、まず狙撃スキルが変態。
アイザックがなんとかしてスナイパーの居場所を特定するんですけど、具体的な距離はよくわからないんですがアイザックが「嘘だろ。あんなところから?」と驚くくらい遠くから撃ってきてるんです。
そんな驚くほど遠距離から、狙って膝・水筒・通信機のアンテナを狙撃できるスキルの持ち主。
APEXでいうとどれくらいなんだろ。3スコで1cmくらいに見える標的にヘッショかますくらいのスキルなんかな。
ていうか通信機の「アンテナ」だけ撃つって完全にチートだと思うんですけど。
その狂った狙撃スキルからアイザックは「こいつ”ジューバ”なんじゃね?」と気づきます。
ジューバってのはイラク戦争時に実在した人物で、37人もの米兵を殺害したイラク最恐のスナイパーらしく、なんか笑いながら狙撃してその様子をyoutubeにアップするとかいう迷惑系YouTuberもビックリな変態行為をしてたらしいです。
んで、モデルが変態なもんだからこの映画に登場するジューバもまあ変態なんですよ。
というか変態だと思って見てみると、「なるほどな」と思えることがいくつもあるんです。
というか、全部ジューバが仕組んでた一方的なデスゲームだったんだろなと。
膝と水筒、アンテナを撃ったこと。アイザックが唯一の遮蔽である「壁」に逃げ込むまで待ったこと。最初の襲撃時には通信機を残していたこと。そもそも少人数の斥候が調査に来ること(多分ですけどアイザックたちが最初の偵察ポイントに来た時点でジューバには発見されていたんでしょうね。だからマシューズが撃たれた時点で援軍支援を要請してたらアイザックはヘッショで葬られてた可能性が高いですね)。そして最終局面であえて沈黙したこと。
ジューバのすべての行動が「どうやったらアイザックが辛いかなあ」「どんなことをしたら苦しむかなあ」「どうしたらヌカ喜びからの絶望を叩きつけてやれるかなあ」という、歪んだ愛情じみた変態行為なんですよ。
個人的に一番コワッと思ったのは、人語を発して獲物をおびき寄せる化け物みたいなことをしてたときですね。
こんなやつメイドインアビスにいたわと思いました。