6年ぶりに歯医者に行ったらご褒美だった話

歯医者に行ってきたんですよ。6年くらいぶりに。

きっかけは、遡ること3ヶ月前の5月末頃。
ある朝目覚めたら奥歯に違和感がありまして、舌でもって確認してみたところ、どうにも歯に穴が開いてる感じなんですよ。
穴っていっても「あ、ちょっと穴開いてるね」みたいな、「キャッ、見つかっちゃった」みたいな感じじゃなくてですね、もうほんと「穴」なんです。俄然「穴」なんです。「我は歯に穿たれし穴なり」みたいな風格なんです。マジでもうガッポリ。歯の1/3くらいの面積はあるんじゃねえかってレベルの穴なんです。

まあ思い当たるフシはありまして、約6年前、治療中だった歯医者を途中でバックレるっていう誰も得しないどころか僕が損するだけみたいな行為をしたことがあったんですけど、多分これだなと。
おそらく治療中で暫定的に穴埋めをしていたところの詰め物が何かしらの理由で取れて、マリアナ海溝みたいな穴が口を開いたってことだと思うんです。すげえな仮の詰め物。仮のくせに6年も持つのか。ランドセルかよ。

しかもどういうわけかわからないんですけど、ガッポリ穴が開いてるってのに全然痛くない。歯に穴ですよ、穴。歯の直径の1/3くらいの穴が開いてるってのに、全然痛みがないんですよ。先生これどうなってるんですか。怖いんですけど。痛みがないのが逆に怖いんですけど。

そんなわけで、色んな意味で恐ろしいことになっているので、これは歯医者に行かないとなと。これはこのまま放置するには穴がデカすぎる。歯医者行かないと。あー、歯医者行かないと。とりあえずAPEXしようかな。今日のところは寝坊しちゃったからまた次の休みには歯医者行かないとな。ていうかまず行く歯医者を決めないと。まあとりあえずAPEXしようかな。あー、今日はなんか疲れたから歯医者は次の休みにしよう。わかった、とりあえず歯医者を決めるだけ決めよう。あー怖い怖い。歯に穴が開いてるのに全然痛くない。逆に怖い。歯医者行かないと。よしこれ、この歯医者。じゃあ予約の電話しないと。まあでも次の休みでいいか。とりあえずAPEXしようかな。電話……電話って苦手なんだよなあ。とりあえずAPEXしよう。今日はなんか誰とも話したくないからまた次の休みには歯医者に予約しよう。あ、起きたら12時だから予約はまた次の休みにしよう。とりあえずAPEXしようかな。

とかなんとか、わけのわからないことをしながら湯水のように時間を浪費し、無為な日々を過ごし散らかしていたんですが、ついに予約電話をして、ついに先日、苦節3カ月、ついに、ついに歯医者に行ってきたんです。

せっかく歯医者に行くんなら、人生初の歯石除去もしてもらいたい

そんなわけで3ヶ月の無駄な時間を経てようやく歯医者へとこぎつけたわけですが、せっかく歯医者に行くんなら歯石除去もしてもらおうと思ったんです。
僕、歯石除去ってなんかめちゃくちゃ痛いってイメージを持っていたんですけど、youtubeで流れてきた「歯科医師がゴリゴリに歯石取ったったwwww」みたいな動画を見て「こんなに爽快な感じで歯石が取れるのか!」と感動したのと「痛みが無いとは言わないけど、そこまでひどい痛みではない」みたいなことが書いてあったので「こりゃあ歯石除去もしてらうしかないぜ!」と決意したわけなんです。

「突如として歯に現れた恐ろしい大穴も治療してもらえるし、人生初の歯石除去もしてもらえる! かーっ、どうしようかな、歯石削られすぎて歯がなくなっちゃったりしてな!」とかいう意味不明なテンションで意気揚々と歯医者に行きまして、「今日はどのようなご用件で来たんですか?」みたいなことを記入する問診票に、「歯石を除去してもらいたい」「3ヶ月前から歯に穴が開いてる」ってことをバシッと書いてやったんです。
歯石の除去はまあいいとしても「3ヶ月前から歯に穴が開いてる」とか、どう転んでもクズなんですけどね。「なんだお前、3ヶ月間なにしてたん? コールドスリープでもしてたんか? あ?」とか詰められても言い訳できないレベルのクズなんですけどね。

そんで問診票を提出して待合室で順番を待つわけですけど、この待ち時間って幾つになってもドキドキしますよね。僕はもう完膚なきアラフォー、汚れきったおっさんなわけなんですけど、幾つになってもやっぱりドキドキする。
「ネットでの評判はそれなりだったけど、実はあの口コミは全部この歯医者の自演で、実はめちゃくちゃ怖い歯医者だったらどうしよう」
「愚地独歩の手首をくっつけた闇医者みたいなやつが出てきたらどうしよう」
「草薙素子が出てきて『あなた歯医者って拷問、知ってるわよね?』とか言いながらナイフを取り出してきたらどうしよう」
とか色々考えてドキドキしてしまうわけですよ。

そんなことを考えながら無駄に何度も手指をアルコール消毒とかして挙動不審になりながら待っていたら「たくろうさん、どうぞー」と。
来た! いよいよ来た! 頼む! 優しい歯医者さんであって欲しい! いやもう優しくなくてもいい! せめて治療してほしい! 闇医者でもいいから歯の治療をしてほしい! 拷問は嫌だ! 僕は何も知らないんです! 本当なんです! と祈るような気持ちでガタガタ震えながら診察室へ。

うん、めちゃくちゃ気さくで良いおっちゃん先生でした。

「レントゲン撮ったけど、ガッツリ穴あいてるねー。これ痛くなかったの? まじかー。そしたら神経抜かなきゃいけないかもだけど、なるべく残す方向でいきたいから見てみるねー」
「あらー、こりゃごめん! 神経抜かなきゃだわ!」
「とりあえず神経抜いて、薬を詰めて塞いだからまた来てね! あ、そうそう、ここに親知らずがあって、今はまだ何もしなくて大丈夫だけど、将来的にこっちも抜かなきゃかもしれないわー」

みたいな感じで、めちゃくちゃ良い感じで優しく丁寧に接してくれました。
「拷問しないで!」とか考えてた僕がバカみたい。いやバカなんですけどね。なんだよ「歯医者って拷問、知ってるわよね?」って。知らねえよ。

いやほんと、もうこの歯医者さんに通う。僕のお口のこと、全部おまかせすりゅぅう! ってくらい良い先生でした。

女性の歯科衛生士さんに歯石除去をしていただいた

そんで治療が終わって、「じゃあこれから歯科衛生士が歯のお掃除をしますねー」となって、いよいよ歯石除去ですよ、歯石除去。拷問への恐怖が大きすぎて忘れてましたけど、僕としては人生初となる歯石除去ですよ。
多分、今まで治療のついでって感じで歯石除去はされていたんでしょうけど、自分から「歯石をとってください!」と依頼をする歯石除去は初めて。
「どんな感じになるのかなー。終わったら歯がスッカスカでツルッツルになるのかなー」とか思いながら期待を膨らませていたんです。
そこでふとインターネットで見た「女性の歯科衛生士さんが担当になった歯石除去は、歯科衛生士さんのおっぱいが頭に当たって天国。まさしくご褒美だ」みたいな話を思い出したんですよ。いや、そういうのは良くないと思いますよ。そんなのセクハラじゃないですか。そういう履き違えた目線で歯科衛生士さんを見るのはダメです。女性性の蹂躙というか、最低じゃないですか、そういうのって。まあでも当たるなら当たるでしょうがないよな。不可抗力だもんな。ていうか待てよ、そもそも担当してくれるのが女性の歯科衛生士さんじゃないかもしれないじゃないか。そういう邪な考えを持ってはいけない。
とかなんとか気持ち悪いことを考えながら待っていたらですね、ガッツリ女性の歯科衛生士さんが担当になったんですよ。

来たわこれ。レアガチャ引いたわ。

とか思いながら、指示通り口を開けて歯石除去が開始となったんですけど、なんていうか、あの、すごいんです。

美容院での洗髪を思い出していただくとわかるんですけど、あれって自分が寝そべる状態になって、上から美容師さんが覗き込む形になるじゃないですか。
そうすると視線のやりばに困るから、みたいな意味合いでガーゼを顔にかけたりされるじゃないですか。
でも歯医者ってそういうのないんですよ。
視線を遮るためのガーゼとか、そういうのないんですよ。
だもんで、僕の口を覗き込んでくる歯科衛生士さんの顔というか目というか、そういうのがガッツリ見えるんですよ。

もちろん歯科衛生士さんの顔をガン見する、とかはしません。そんなもんセクハラじゃないですか。APEXっていうFPSゲームにガスおじっていうキャラクターがいるんですけど、僕、そいつみたいな顔してるんですけど、そんなやつに見つめられるとか事案じゃないですか。めちゃくちゃ気持ち悪いじゃないですか。

ガスおじ
ガスおじことコースティックさん。趣味は毒ガス散布。

こんなやつに見つめられるとかマジでありえないじゃないですか。
「歯医者って拷問、知ってるわよね?」って言いたくなるじゃないですか。
だから僕もなるべく天井とかに視線をズラしてですね、なんか点々みたいに穴が開いてる天井の模様の穴の数とか数えてたんですよ。あの模様、トラバーチン模様っていうらしいよ。

そうやって必死に視線をズラしてはいるんですけど、やっぱり歯科衛生士さんの顔が視界に入るんですよね。どうしても視野に入ってくる。
でね、その歯科衛生士さんの表情がね、マスクしているのと上から覗き込む視線になってるのと相まって、もう完全に「なにこいつの口、マジ汚物なんですけど」って表情に見えるんですよ。すごい、ゴミムシを見るみたいな視線で僕を見ていらっしゃるんですよ。
いやいや、もちろん歯科衛生士さんがそんなふうに思っているわけはない。仕事だから真面目にやっているのと覗き込む姿勢になっているから、下から見上げる形になっている僕の視点では道端でゴキブリを見つけたときみたいな表情に見えるだけ。それだけ。見下されてるとか考えるのは逆に歯科衛生士さんに失礼。必死にそう思い込もうとするんですけど、もう止められない。

そもそも僕の口内は虫歯がある時点でもう汚いわけで。歯周病とか病原菌とかの温床で、そいつらの仕業で口臭もあるだろうし、毎日毎日ベロベロ酒を飲んでるから内臓が弱って胃からゲロみたいな臭いが上がってきてるかもしれない。
「なにこのガスおじみたいな顔したやつ。マスク越しにも口臭が漂ってくるんですけど」とか思われてるに違いない。

ガスおじってキャラクターは毒ガス缶を設置して、敵が近づいたらそのガス缶が破裂してダメージを与えるってスキルを持ってるんですけど、そのスキルでダメージを受けることを「くっせえ」って表現したりするんですよ。

ガスおじガス缶破裂
破裂して異臭をふりまくガス缶(僕の口内)

顔がガスおじで口がガス缶ってもう完全にガスおじじゃないですか。ガスおじVRじゃないですか。こんなやつが人様に口内を晒すとか完全に事案ですよ。「歯医者って拷問、知ってるわよね」案件ですよ。

そんなことを考えてる間にも歯科衛生士さんは冷徹な目で淡々と歯石除去をすすめていくわけですが、僕はもう興奮で気が気じゃない。

「次は歯の裏の歯石をとっていきますねー」

みたいな感じに次に何をするか説明しながら作業しているんですけど、これ絶対「歯の裏に歯石があるとかマジキモい。なんなの? 歯の裏に隠して育ててますっての? 汚いんですけど」って思われてる。マジでやばい。やばいくらい興奮する。ガス漏れちゃう。

すいません。僕は歯石を育てるくらいしか能のないガスおじです。本当にすみません。僕のような汚物が歯石除去なんて依頼して申し訳ない。

「次は全体をお掃除していきますねー(お前自分で歯の掃除もできないわけ? なんであたしがお前の汚い歯を掃除しなきゃいけないの? おい豚、聞いてんのか?)」

ンおっ! すいません! 僕は自分で歯の掃除もできない哀れなクソ豚です!

「マジくっせえし汚えし最悪だわ歯間にクソみたいに歯垢たまってんぞ豚。死ね(歯間のお掃除しますねー)」

ピギィイッ! 死にます!! 歯間に歯垢ためて死にゅぅうぅ!!

「はい。終わりましたー。全体的にきれいに歯磨きできていますね!」

んぎぃいぃッ! すみません!! 全体的にきれいに歯磨きできててすみmあっ、そうですか。良かったです。ありがとうございました。

人生初の歯石除去は、ご褒美だった

そんなわけで人生初の歯石除去だったんですけど、いやー、良かった。

すごく冷徹な表情で見下されながら口の中をクチュクチュされて、「ああっ!すみません!僕のゴミ溜めのような口内を歯科衛生士様に掃除させてしまってすみません! お許しくださいぃ!」ってなって精神的なご褒美をいただき、更に「きれいに歯磨きできていますね!」なんて生活習慣に対してのご褒美までいただけて、なおかつ僕の痰壷みたいな口内がきれいになるなんて。ご褒美だらけや。ご褒美の宝石箱や。え? おっぱいが頭に当たる? 君たちはそういうゲスな思考をしているから歯垢がたまるんですよ? 改めたまえよ?

最高でした。
もう歯の穴の治療とかどうでもいい。歯石除去のためだけに通いますわ。念入りに歯磨きして、また歯科衛生士様にご褒美を賜りに行きますわ。

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日記

Posted by たくろう