【ネタバレ】映画ジャーヘッド感想

アマプラで割と評価が高かった(星4/5)ので視聴。
「16+」のレイティングが付いていて、「過激」「悲惨な」というタグもあり、あらすじも危険な雰囲気があったので興味を惹かれました。
サムネイルに映る主人公の顔つきもちょっとサイコパスっぽいっていうか、なんかヤバそうな顔してたんすよ。敵を捕えたら足先からヤスリで削っていく拷問とかやりそうな、ヤスリだけで指先から膝まで削り落とすとかやりそうな顔なんすよ。もしくは友軍の頭を後ろから狙撃しそうな顔。俳優さんにめちゃくちゃ失礼なこと言ってるんですけど、だってそんな雰囲気だったんだもの。


パケではサイコパス感が薄れてる主人公(右)

そんな危険なニオイをプンプンに醸し出していたんで、どれだけ凄惨な映画なんだろうとドキドキしながら見始めたんすけど、まああの、なんていうか、そういう意味では期待外れでした。
というか戦争の緊張感があったのは本当に最終盤だけ。
悲惨な戦闘とか、敵軍との緊張感のある攻防とか、そういった「いわゆる戦争映画」というものを期待すると肩透かしを食らうと思います。というか食らいました。内容的には1988年に18歳で志願兵として海兵隊に入隊した主人公スウォフォードが1990年の湾岸戦争に派遣され、その戦争が終わるまでを描いた作品。
原作は実在のスウォフォードが書いた湾岸戦争体験記「ジャーヘッド/アメリカ海兵隊員の告白」らしいです。

なので、多分ほんとリアルにこんな感じだったんだろうなとは思うんですけど、なんていうんすかね、完全に男子校なんですよね。隔絶された男子校にいる男子高校生の青春というか、そりゃー厳しい訓練で体力ゴリラになった性欲マックスの二十歳前後の男が娯楽のない砂漠に集められて、しかもやることもなければ(当然訓練はするけど、ずーーーっと待機命令)こうなるよねっていう。ナチュラルに「マスをかく」とか言ってますからね。いや二十歳前後の頃僕も言ってたわ。なんなら今も言ってるわ。

戦争映画あるあるの「本国に残した彼女に会いたい」からの「彼女に浮気されてる」エピソードも当然のように出てくるんですけど、こちとらほぼ学園青春モノの視点で見てるんでちょっと見方が変わってくるんですよね。
手紙で彼女の浮気が分かったときも茶化す仲間がいれば優しく慰める仲間もいるし、茶化したやつもちゃんとフォローするし、場が冷めちゃったあと本人が居ないところでもう一回ネタにして盛り上げたりとか、なんかこう、あぁ~、青春だなあと。

こういった「男子高生がバカやってる日常」みたいなのがずーっと続くんですよ。シチュエーションが砂漠ってだけで、やってることは男子高生のゆるふわ日常モノみたいな。鳥取の男子校の高校生ってこんな感じなんだろうなみたいなすいません嘘です。

なので、つまらないと言えばつまらないんですけど、主人公の鬱屈とした日々をこうした何も無い日常を描写していくことで追体験させてるんだろうとも思うんです。
つまらなくて当然というか、「自分は何をしてるんだろう」「敵を倒すために訓練をしているのにこれじゃ意味がない」「彼女を失い、自分の時間も失い、こんなところにいて何になる?」という主人公の空虚さを味わわせてると考えると、よくできているなあと。

最終盤、ようやっとちょっと戦争映画っぽくなり、スウォフォードと仲間のトロイに管制塔にいる敵将校の狙撃命令が出ます。
スナイプポイントも確保し、狙いも万全、狙撃許可も出てもう撃つ寸前、というところで別部隊の仲間と将校が入ってきて「空爆するから狙撃しなくていいよ☆」と。
呆然とするスウォフォードと、泣きじゃくりながら「どうせ爆撃するなら撃たせてくれ」と仲間の将校に掴みかかるトロイ。
将校は無慈悲に「拒否する☆」と爆撃を要請。
スウォフォードたちに狙撃されることなく、敵将校は管制塔ごと見事に灰燼に帰すのでした。

これ、トロイは海兵隊に残りたいと希望していたんですが、犯罪歴を隠して入隊していたことが判明し、帰国後は除隊処分となることが決定していたんですよ。
彼は部隊内のいざこざを収めたり冷静な立ち位置でいることが多かったんですけど、きっと本国に居場所はないし海兵隊を拠り所としていたんでしょうね。だから部隊内で真面目に冷静に過ごしていた。
だけどこの戦争が終わったらシャバに戻るしかなくなった。戻ったら「”クラック”を売る」なんて冗談めかして言ってましたけど、それくらい社会に居場所を感じなかった。
だもんで、せめて海兵隊にいるうちに何かを成し遂げたかった。敵を倒したという勲章があれば、社会でもやっていけるような気がしたんでしょうね。拠り所が欲しかったんでしょう。
でも、結局何も成せず、戦争は終結します。

「男は何年も銃を撃ち、そして戦争に行く。やがて家に戻り、それ以外のことをし始める。家を建て、女を愛し、オシメを変えるが、彼はいつまでも”ジャーヘッド”」
映画の冒頭と最後にこのように語りが入ります。

「ジャーヘッド」とはアメリカ海兵隊の蔑称で、諸説あるそうですが、海兵隊員特有の髪型を「ジャーの蓋」に見立てているというのが有力だそうです。この映画では「ジャーは頑丈で立派だが、中身は空っぽ」つまり「ジャーヘッド=頭空っぽのバカ」という説を採用しているのですが、映画の感想サイトを眺めていたら「ジャーヘッドには『空っぽな日々』もかけられているのでは」という感想を見つけ、なるほどなと。

なんだかこれって、ド陰キャの学校生活みたいだなあと思いました。

延々と男子校のノリを見せられたのでなおのことそう感じたんですが、ド陰キャの学校生活ってほんと空虚じゃないですか。部活も文化祭も、夏休みも冬休みも、授業も部活も休み時間も放課後も、ほんと空虚じゃないですか。
卒業までの数年間。なにが自分に残ったのかって考えて、ほとんど何もなかったと感じたときの絶望感。
たった数年のその経験がずっと自分の人生に残り続け、事あるごとに頭をもたげる。

ド陰キャはいつまでも”ジャーヘッド”なんだなあと思いました。

スポンサーリンク

日記,映画

Posted by たくろう