散りゆく桜はどこへ流れていくんだろう

今年、関東ではちょうど桜が満開の時期に雨が重なり、桜の花びらが雨に流される「桜流し」を見ることができました。
桜の花びらが散っていく様子は美しくある反面、やはりどこか寂しさを感じるものですね。

さて、春といえば露出狂の季節ですね。

露出狂というのはいわゆる「変態」、「変態性欲」の一種。
性的倒錯とも呼ばれるこの変態は、大きく「性対象の異常」と「性目標の異常」の2つに分類されます。

「性対象の異常」とは、ナルシズムやフェティシズム、マザコンやネクロフィリアといったもの。
「性目標の異常」とは、カニバリズムやスカトロジー、サディズム、マゾヒズムなどがあります。
露出狂という性的倒錯は「性目標の異常」で、そのまんま「露出」というものに分類されます。

この数多くの変態の中で、季節感を感じさせる変態というのは「露出狂」しかないと僕は思うんです。

子供の頃、学校で「暖かくなってくると変質者が出てくるので注意しましょう」みたいな注意をうけていたじゃないですか。「暗くなったらおうちに帰りましょう」「人気がないところを歩かないようにしましょう」みたいなことを言われていたじゃないですか。
あれってきっと、露出狂に対しての注意喚起だったと思うんですよ。

スカトロジーとかサディズム、マゾヒズムとかって、別に暖かくなってきたから出てくるってわけではないじゃないですか。「よし、暖かくなってきたからウンコ顔に塗りたくったろ!」ってならないじゃないですか。「冬が終わって春になったからムチでしばいたろ!」ってならないじゃないですか。
確かにウンコ顔に塗るにしても「暖かい季節の方が顔に塗ったウンコがすぐ冷めない」とかはあるかもしれないですけど、別にストーブ焚いた部屋で顔にウンコ濡ればいい話なわけで「暖かくなってきたから」冬に比べてウンコを顔に塗りたくる頻度が上がるわけではない
じゃないですか。こんなに「ウンコを顔に塗る」って書いたの初めてだよお。

なので、暖かくなってきたから出現する変態って露出狂しかないと思うんですよ。

露出狂の基本装備って、裸にコート1枚っていう、裸の大将より裸の大将みたいな装備だと思うんですけど、これが春先と非常に相性が良い。
春先って、日中は暖かくなってきたけど日が落ちると肌寒くなって上着が欲しくなる、みたいな気候じゃないですか。だからコートを着て夜道を歩いていたって全然不自然じゃない。ここに春先に露出狂が増えるというカラクリがあるんですね。
「コートを着てて不自然じゃないってことであれば秋だって冬だって良いじゃないか」って向きもあると思いますが、露出狂だって人間なんですよ。露出狂だって人間なんです。あまりに寒いところに裸コートとかやったら風邪ひくんです。38℃の熱とか出すんです。露出狂の体調も考慮していただきたい。冬に裸コートとか馬鹿だから。

そんな春の風物詩である露出狂なんですが、僕は露出狂ってけっこう哀しい存在だと思うんです。

露出狂の性目標って「やってはいけない場所で肌を露出していることに性的に興奮する」「こんなところで裸になって、誰かに見られるかも知れない背徳感に性的に興奮する」ってことなんですよね。
ここにひとつアンビバレンツ、すなわち「見られてはいけない」けれど「見られたい」という相反する感情がある。

商業ラインに乗らない薄い本でよく見るんですが、露出に興味がある女の子なんかが「ちょっとだけ……」とか言いながら人気のないところで乳をボロンと出したりする。
最初はそれだけで「あたし、こんなところでおっぱい出してる……。誰に見られるかもわからないのに、おっぱい出しちゃってるぅ……」ってなって興奮してるんです。
最初はそれだけで良かった。十分に興奮できた。
でも人間とはどんな状況にも適応する生き物。適応するということは慣れるということ。
慣れとは恐ろしいもので、もっと強い刺激を求めるようになる。
そうなると今度は「ノーパンで外歩いちゃお……」ってなって、「ノーパン+もっと短いスカートで歩いちゃお……」となり「よっしゃ! 裸コートで出歩いたろ!」となる。
どんどん強い刺激を求めるようになるんです。
その結果「あたしのこんな姿を人に見られたらどうなっちゃうのかな……」となり、「この異常な姿を人に見られたい」という悟りの境地にたどり着くわけです。

しかし、露出という行為自体に明確な罪名はないものの、他の様々な規定に基づき処罰の対象となる可能性があります。
例えば東京都の迷惑防止条例には「人に対し、公共の場所または公共の乗物において、卑わいな言動をすること」という規定があり、これに露出行為が該当する可能性があります。
また、軽犯罪法第1条第20号には「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他体の一部をみだりに露出した者」を罰するという規定があります。
この規定を作った人が尻とモモに並々ならぬ執着を持っていることがわかりますし、逆にこの人の方が何かしらの変態である可能性も拭いきれない感がありますが、こういった規定があります。
また、刑法第174条には「公然わいせつ罪」として「不特定多数または多数の人が認識することのできる状態で、わいせつな行為をした者」が処罰を受けるとされています。

つまり「裸で出歩いているこんなあたしを見て!」という欲望のままに外を歩くこと、それ自体が許されない行為。
露出狂とは、その存在自体、その欲望自体が、人間社会では罰則の対象となるのです。

これはなんていうか、哀しいことですよね。

確かに遅くまで塾で勉強していた女学生が帰路を急いでいたら、いきなりおっさんが出てきて「バア!」とか言いつつコートの前を開けて毛むくじゃらの裸体とビンビンに勃起したチンポを見せつけてきた、とかなったらトラウマもの。それ以降チンパンジーを見るだけで嘔吐するようになってしまった、とかの心的外傷を負わされるレベル。絶対に許されざる行為です。

しかし裸コートで外を出歩き、あまつさえ人にその裸体を見せつけるようになってしまった露出狂とは、もはや末期なのです。
「見られてはいけないことをしている」ことで興奮することから始まり、「見られたらどうしよう(でも見られたいかも)」と少し能動的な行動を取るフェーズを経て「見てエッ! 裸を見てえェッ!!」という境地まで達してしまった露出狂は、もはや見られることでしか興奮できなくなってしまっているのです。

こうなるともはや露出狂は人間社会では生きていくことができません。
性的興奮を得るためには人間社会の規範を外れるしかなくなってしまったのですから。
しかし人間社会で生きていけないからといって「森におかえり。もうこっちに来ちゃダメだよ」とかいって野に放すわけにもいきません。だって森で露出しても誰もみてくれないもん。結局人里に降りてきて露出するしかない。なんか人の味を知ってしまったヒグマみたいになってる。

つまり露出狂とは、人間社会では受け入れられないにも関わらず、人間と関わることでしか性的興奮を得ることができない。そんな哀しい存在なのです。

春となり、桜のつぼみが膨らむ頃に動き出す露出狂。
そして桜の花が散るように逮捕されていく露出狂。

散りゆく桜は、どこへ流れていくんだろう。
留置所かな?

舞い散る桜を眺めながら、そんなことを考えたのでした。

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