魔術詠唱とはコミュニケーションだ

Twitterのトレンドに「詠唱速度」ってのが上がってたんで、「詠唱速度」について書こうと思います。

トレンド一覧見たとき、詠唱速度ってなんのことじゃいと思ったんですが、「診断メーカー」で「魔術師としてのあなた」が診断できて、その診断内容のスペックのひとつだってことでトレンド入りしたみたいです。うん、意味がわからん。

診断の詠唱速度には「一瞬」とか「やや速い」とか「普通」とか「遅い」とかがあって、まあきっと「一瞬」ってのが最高のランクなんでしょう。

魔術っていうと、まあわかりやすいところだとドラクエの「メラ」だとか、ファイナルファンタジーの「ファイア」とかになりますわな。
これを唱えるのが「速い」=「強い」=「最高」と。なるほど。

異世界転生モノって乱発されすぎててまたかよ感でバカにされてるんですけど、僕がわりと好きな異世界転生モノに「転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます」っていうラノベ原作の漫画がありまして、まあ転生したら第七王子だったので気ままに魔術を極める話なんですけど、この作品の中に「呪文束」って概念があるんです。
転生したつよつよ第七王子(かわいい)が呪文詠唱の時間を短縮するために編み出した複数の呪文を一纏めにして唱える技術なんですけど、呪文100個を束ねて唱える吹き出しとして「」と表現されています。
100個を一瞬で詠唱するもんだから密度が高すぎて黒塗りになるっていうことなんでしょうね。
このように、100個同時に詠唱できたりすると強い、つまり詠唱が速ければ速いだけ強いということになるわけですな。うん。わかるわかる。

でも、ちょっと待ってください。

異世界転生ではなく我々の住まう世界にも「祝詞」という概念があります。
神社本庁のHPには『祝詞とは、祭典に奉仕する神職が神様に奉上する言葉』であるとされており、『言葉には霊力が宿り、口に出されて述べることにより、この霊力が発揮されると考えられています』という記載があります。
詠唱することで力が発揮される言葉、言霊であり、つまりこれも魔術詠唱のひとつであると言えるでしょう。

じゃあ、祝詞も詠唱が速ければ速いほど良いのか、というとそうではなく『祝詞には、こうした言霊に対する信仰が根底にあるため、一字一句流麗で荘厳な言い回しを用いて、間違えることがないように慎重に奏上されます』と書かれています。

まあそうですよね。人間という矮小な存在が神という偉大なる存在に対して申し上げる言葉なわけですから、速さよりも丁寧さが求められますよね。
神様に対して「」とか言ってたら天変地異とか起きそうですもんね。

こうなってくると、魔術詠唱というものはコミュニケーションだなと思うんです。

フィクションの世界ではさまざま設定がなされていますが、まあ大体が自分自身の体内にある魔力を消費してコードを詠唱することで世界に何らかの影響を与えることを指しています。魔力を媒介として世界へとアクセスする。
これは魔術詠唱を通して世界の目には見えていないさまざまな要素とコミュニケーションをしているということですよね。
要素だけでなく、精霊だったり幻獣だったり、人格を持つ存在と詠唱を通してコミュニケーションしている場合もあります。
「祝詞」はもっと直接的で、神様とのコミュニケーションとして魔術詠唱を行います。

こう考えると、詠唱が速ければ速いだけ良いなんてのは乱暴だなあと思うわけです。

僕の職場にもめちゃくちゃ早口でなおかつ小声で喋るおっさんがいるんですけど、ほぼ確実に聞き返しますからね。酷いときなんて3回聞き返しても何言ってるかわかんないもんだから諦めることがありますからね。
こんなもん祝詞だったら大変ですよ。神託の内容が「ごめんもう1回お願い」とかになりますからね。神職失格よこんなもん。

詠唱はコミュニケーションなんです。速ければ良いというものではない。
きちんと相手に想いが伝わるかどうか。そこが大切なんです。
そう、結局詠唱速度なんて「普通」が一番。
速度よりも相手への思いやりが大切なんです。
診断メーカー「魔術師としてのあなた」

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日記

Posted by たくろう