アニメ「メイドインアビス」はかわいさと絶望感で人間性を喪失する

Amazon Prime Videoでメイドインアビス1期を視聴。

ストーリーの立ち上がりがモッサリしててちょっとだるいなーと思ってたら、第三話からサクサク話が進んでいきました。

「アビス」と呼ばれる大穴を探検する「探窟家」が集う町「オース」。
この町の孤児院で暮らす「リコ」は伝説級の探窟家である母親に憧れ、アビスの謎を解明する夢を持つ。
母親から届けられた「アビスの底で待つ」というメッセージを受け取ったリコは、アビスで拾った少年型のロボット「レグ」とともにアビス深層部を目指すのだった。

というのがちょうざっくりしたストーリー。

絵本のようにほんわかした絵柄でキャラクターたちもかわいらしいデザインなんですけど、ジャンルが「ダークファンタジー」というだけあってえげつない内容でした。

アビスの大穴ってのはどれだけ深いのかもわかってないくらい深いっていう意味の分からない未開の大穴なんですけど、まあ数多の危険が多くて危険が危ない。
まず、ここを降りて戻ってこようとすると「上昇負荷=アビスの呪い」ってものを受ける。まあ「上昇負荷」っていうくらいだから、要はダイビングにおける減圧症みたいなものなんだろうなーと思ってたんですけど、まあ近いっちゃ近いけどエグさが全然違った。

この「アビスの呪い」ってのはアビスの深度によって変わるものでして、第一階層とかの浅い階層ならそれほどの影響は受けないんですよ。言うてめまいとか嘔吐ぐらいなものなんですよ。まあ「嘔吐ぐらい」とは言いつつ、ほんわかしたキャラクターがおもむろに嘔吐するシーンがキッチリ描写されてて「オッ」ってなるんですけどね。「なんか茶色いの出た!」って震えるんですけどね。

んで、これが深界六層、深度13000m以上とかになってくると、アビスの呪いはめちゃくちゃなことになってきて「人間性の喪失もしくは死」とかになるんです。うん、ちょっと意味がわからない。なんやねん人間性の喪失って。現代社会に警鐘を鳴らしとるんか。現代におけるブラック企業での労働を13000時間続けると人間性の喪失もしくは死が待ってるみたいなことを言ってるんか。社畜はアビスの呪いを受けた人間だっていうことなんか。

ただ降りて戻ってくるだけでもこれだけシビアなアビスなんですけど、そこに巣食う生き物もシビア。かなり過酷な大自然が待ち受けています。
アホみたいに巨大な虫だか鳥だか魚なんだかわからない動物が闊歩してますし、めちゃくちゃ石投げてくる猿とかいますし、未来予知する毒持ちの四足獣なんかもいる。
未来予知する毒持ちの四足獣とかもう嫌すぎてどれだけ嫌なのかわからないレベルなんですけど、僕は個人的にはめちゃくちゃ石投げてくる猿を推します。現実的なレベルでだいぶ嫌じゃないですか? 石投げてくる猿ですよ。しかも集団で。苛烈したデモみたいなもんじゃないですか。結構イヤですよこんなもん。

アビス自体もシビア、生き物もシビア、これだけで「もうこんな世界で生きていけない!」って思うんですけど、更にシビアなのがストーリー、というか主人公たちが置かれる状況なんですよね。

いろいろな手立てがすべて塞がれて、もうこうするしかない! という状況で選択した行動が裏目に出たりするんです。

前述した未来予知する毒持ち四足獣の毒に冒されたリコを救うため、「アビスの呪い」を承知で高所に逃げたレグ。
レグはロボットなのでアビスの呪いを受けないんですけど、リコはガッチリ生身の女の子なんでゴリゴリにアビスの呪いを受けて、体中の穴という穴から血が吹き出てくるんです。
毒が全身に回らないように毒を受けた左手を縛ってるんですけどそこがもうパンパン。顔の大きさくらいに腫れてて、触っただけで叫んでのたうち回るほどの痛みが走る。ほっといても全身から血が吹き出してくる。リコはリコで「毒がまわらないうちに左手を切り落として」とか要求してくる。「骨があって切りにくいからまず骨を折って」とか謎に的確なアドバイスをしてくる。骨を折れば当然リコはのたうち回り、意を決して切り落とそうとすれば恐怖でうまく切れずいたずらに傷つけるだけ。アッアッアッアッってなってるうちに顔色が蒼白になっていくリコ。
もうこっちもアッアッアッアッってなる。画面の前でアッアッアッアッってなっちゃう。

もう状況が絶望しかない。
こんなひどいことある? って話ですよ。お前らちょっと前まで「この動物の肉旨いっすね」みたいな話してたじゃんか。

ところがそこに助けの手が差し伸べられるわけですよ。
ここで登場するのが「ナナチ」と「ミーティ」なんですけど、こいつらがまたクッソかわいいんです。悔しくなるくらいかわいい。かわいさの暴力。アビスはかわいさもシビアなんかってくらいかわいいんです。

ナナチはもうほんと、順当に、まっとうにかわいくてですね、全身がふわふわの毛で覆われていて、ウサギのような長い耳とキツネのような尻尾を持つ二足獣。かわいい。こんなもんケモナー大歓喜ですよ。ケモナーじゃなくても大歓喜ですよ。

ミーティはなんだろう、端的に言うと肉塊。くずれた豆腐みたいな見た目なんですけど、これがかわいい。マジモンのキモかわいいってミーティのことなんだろうなって思っちゃう。かわいい。「マー」みたいな意味の分からない鳴き声してるんですけどこれもかわいい。

ほんと、この気持ちをどうしたらいいのってくらいかわいいんですけど、実はこの2人にもまたこっちが嘔吐しそうなくらい絶望的な過去があるんです。
簡単に説明すると、この2人はもともとは人間だったんですが、「人間性の喪失」というアビスの呪いを受けた「成れ果て」という存在なんです。

というか「成れ果て」に「された」んですけど、この過去もエゲツないくらい絶望的だし、本編で描かれている未来も絶望しかない。

リコが呪いを受けた時もそうなんですけど、ほんとね、そうとしか行動できないよって状況。なんだけどそのどうしようもなく取った行動が絶望を呼ぶ。絶望が連鎖していく。どんなぷよぷよやねんってレベルで連鎖していく。
いや、少しの救いはあるんですよ。
でもこれだけ絶望がマシマシで迫ってくると、もはやそのほんの少しの救いすらも、絶望をより深く味わうためのスパイスなんじゃないかと思ってしまう。
多分これはまじでね、かわいい絵柄とかキャラデザも絶望を引き立てるスパイスだね。このアニメは絶望を味わう作品だね。

こうなってくると、リコが母親と逢えるかどうかってところよりも、逢ったとしてめちゃくちゃつらい状況なんだろうなと思っちゃいますよね。どんだけ僕らの心を殴りつけてくるんだろうなって、逆に期待しちゃいますよね。
これからリコとレグは、登場人物たちは、どれほど酷い目にあうのか。

多分これって、作者の性癖なんだろうなって。
かわいい存在がめちゃくちゃ酷い目に遭うってシチュエーションが大好きなんだろうなって。
やたらと嘔吐と失禁の描写があるのもそういう性癖なんだろうなって思うんです。

いやーつらい。見るのがつらい。
つらいんだけど、でも気がつくとナナチを目で追ってる。ミーティが出てくるとニッコリしちゃう。まじでかわいい。かわいいしか言えない。僕もアビスの呪いを受けているのかもしれない。人間性を喪失しているのかもしれない。それくらいかわいいしか言えない。言いたくない。もうナナチとミーティがいればそれでいい。もう「マー」しか言えない。
やばい。
マー



Amazon Prime Video「メイドインアビス」

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日記アニメ

Posted by たくろう