お盆についての所感
お盆ですね。
今年は祝日である山の日が金曜日ってことで、一般的な企業のお盆休みが6連休だとか、なかには9連休だとか10連休だとかを取っている人もいるそうで、景気のいい話じゃないですか。
冒頭のこの皮肉でおわかりいただける通り、僕はといえば職場でコロナウイルスの感染者が出まして、お盆もなにもあったもんじゃないわけですよ。
まあ介護職なんてものはゴールデンウィークも盆も正月も、そもそも一般的な大型連休なんて全く関係ない職種ではあるんですけど、世間様がおばあちゃんちに帰省するだとか避暑地で快適にグランピングだとか、「コロナが5類になって初めての夏。今年はお金をかけてちょっと遠くへ♥」だとか浮かれ散らかしてるのを傍目に見ながらクソ暑い防護服をガシャガシャいわせてアホみたいに汗かいて働くってのはなかなかの地獄なわけですわ。
みなさんどうですか。お盆、楽しんでますか。
まあそんな呪詛ばかり吐いていてもしょうがないのでお盆について考えてみたんですけど、そもそもお盆って祖霊たちが里帰りするってんでそれを迎えてもてなそうっていう期間じゃないですか。なんかキュウリに乗って帰ってくるんでしょ? 祖霊が。キュウリよキュウリ。そんなことある? 「急いで里帰りしたい! せや、キュウリに乗ってこ!」ってならんでしょ。乗ったところで微動だにしないだろ、キュウリ。ていうかそもそもキュウリは帰るべき家に置いてあるんだからキュウリに乗りたかったら一旦家に帰って来なきゃダメじゃねえか。そんで霊界に戻るときはゆっくり戻りたいからナスに乗るんでしょ? なんでやねん。乗ったところで微動だにしないだろ、ナス。
ほんと意味がわからん。「ちょっと遠くへ♥」とか言って浮かれてるお前らもキュウリ乗って行けよ。
あ、ちょっと気を抜くとお盆休みの方々への呪詛が口をついてしまう。いかんいかん。
ていうか祖霊って毎年毎年お盆に帰省してますけど、君たちいつまで霊界にいるの? って思いません? 輪廻転生っていうか、生まれ変わりみたいなのしないの? って。
例えば僕の曾祖母なんかは亡くなってから40年近く経っているんですけど、その間ずっと霊界にいるんすか? って話なんですよ。めちゃくちゃ居心地良さそうじゃねえかって。
あ、でもあれか。輪廻転生しないってことはその環から外れる=解脱したってことになるんかな。ひいばあちゃん解脱しとるんかな。すげえ。仏陀じゃねえか。
でもたしかにお盆に確実に帰省できる霊界ってかなりホワイトな環境だと思うんですよ。
一節によるとお盆の他に正月にも祖霊が帰ってくるらしいので、年2回、確実に帰省できるんですよ。
そりゃあ子供の頃はほぼ確実に夏休みや正月におばあちゃんちに行ってましたけど、社会人になった今、皆さんどうですか。盆暮れ正月、確実に長期休暇取れていますか? 実家に帰れていますか? え? 帰れていますか。そうですか。もういいです。
僕の場合でいうと、一般の人たちが休暇に入る、所謂ハイシーズンってのは基本的には休めないんですよ。
職場の中にもカーストがあって、その上位に位置するのが派遣社員やパート職員。彼らは月の休みを自由に設定できるという特権階級なんです。その下に位置するのが僕ら正社員。派遣社員様やパート職員様が「お盆はお金をかけてちょっと遠くへ行きたいから休みたい♥」とか仰っしゃれば僕らはその穴埋めをしなければならないわけです。
そんな僕ら介護職に比べれば、年2回のハイシーズンに必ず帰省できる祖霊ってかなり恵まれてると思うんです。クソッ、死にたい。僕もキュウリ乗りたい。
と、ここでふと気づいたんですけど、祖霊が帰省するのって子孫がいるからじゃないですか。お墓参りをしないだとか、仏壇がないだとか、キュウリが置かれてないとかはあるかもしれませんけど、まあ家があればいいわけですよ。子孫の家さえあれば気合で帰省できるわけですよ。
石垣島とかの祖霊はちょっと交通の便が悪いかもしれませんけど、キュウリに乗って帰れるってんだから孤島だろうがなんだろうが行けるはずじゃないですか。なんかよくわからんけど神通力みたいなのでなんとかしたらいいじゃないですか。
でも、家がなかったら帰省ができない。つまり僕の代で子孫が途絶えたら帰る場所がなくなるわけです。
これって結構やばくないですか。
他の祖霊たちは盆暮れ正月にキュウリ乗って実家に帰っているときに、閑散とした霊界でTV見ながら酒飲むしかないわけでしょ? いや、それはそれで僕はいいんですけど、これって多分僕だけの問題じゃなくて、一族の祖霊たちみんなが帰省する場所がなくなるんですよね。
めちゃくちゃ嫌だわ。「お前の代で一族断絶したから盆暮れ正月帰省する場所なくなったじゃねえか」って年2回ぐちぐちぐちぐち言われるんでしょ? 針のむしろじゃないですか。
なんなんだよ、この世界。
生きても地獄だし死んでからも地獄じゃねえか。
もう嫌だ。どこか遠くへ行きたい。