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初めて美容院でトリートメントしたら雨に打たれた

僕、結構なロン毛なんですよ。
完全なるアラフォー、完全無欠のおっさんであるくせに、宅八郎かもしくは好意的に言うとCreepyNutsのR指定だねってくらいのロン毛なんですよ。
まあ宅八郎はそういうキャラで売ってましたし、R指定はミュージシャンというかラッパーなのでロン毛でも問題ないじゃないですか。
でも僕は完全に社会人であり、アラフォーであり、顔の造形がわくわくさんなんですよ。
どうですか。宅八郎みたいな髪の長さのわくわくさんを想像してみてください。どうですか。恐怖を感じませんか。そうですよね、「怖い」もしくは「キモい」ですよね。それが僕です。

まあそんな感じで社会不適合者なんですけど、先日美容院に行ったんです。
いくら僕が社会不適合者だとしても、顔面わくわくさんで頭髪が宅八郎だとしても、まあ小綺麗にはしたいじゃないですか。すでに小綺麗ではないんですけど、せめてその心意気だけは持っていたいじゃないですか。
まあ小綺麗にするっていってもロン毛を短く切りそろえるとかではなくて、髪の内側をツーブロックに整えてもらうために行くんですけどね。ツーブロックの宅八郎になるだけなんですけど。なんかツーブロックの宅八郎っていよいよ犯罪者臭がしてくるんですけど大丈夫かな。

そんでもう1つ問題があって、今現在髪の毛がバッサバサなんですよ。
なんか丑三つ時に神社で藁人形とか打ち付けてる人いるじゃないですか。いるじゃないですかって僕そんな人見たこと無いんですけど、なんかそういうことしてそうな人の人相ってあるじゃないですか。
僕の髪の毛って今まさにそれで、「絶対この人藁人形作ってる」「米農家の人に『自宅で納豆作っててぇ~』とか言って藁を分けてもらってそれで藁人形作ってる」って感じなんですよ。
まじでバッサバサでパッサパサ。痛みきってるし潤いなんか皆無。なんか僕の人生みたい。死にたい。

まあそんな絶望しかない感じの髪質なんで、こりゃあ「トリートメント」ってやつをやってもらってもいいんじゃないかなと思ったんです。

やばいですよね。顔面ワクワクさんで犯罪者臭のするツーブロックの宅八郎(アラフォー小太り)が丑の刻参りしてそうな頭で「トッ、トトト、トリィトメントし、ししししてみようかなブヒヒ」とか考えてるんですよ。やばいですよ。裁判したら絶対死刑になる。

とは言えですよ。とは言え、顔面ワクワクさんで犯罪者臭のするツーブロックの宅八郎で丑の刻参りしてそうな髪の毛したアラフォーの小太りとは言えですよ、なんか悪口のオンパレードでこれ書いてて死にたくなるんですけど、とは言え、「丑の刻参りしてそうな髪の毛」よりは「潤いのある髪の毛」の方がまだマシじゃないですか。
この目を背けたくなるバッドステータスのうちの1つを解除できるならした方が良いに決まってるじゃないですか。
まあ、果たして解除できるものなのかはちょっとわからないんですけど。
解除しようとしたらその人が「わ、私には恐ろしくてこの呪いは解除できない……。帰らせてもらう!」みたいなこと言い出すかもしれないんですけど。
そうなったら丑の刻参り職人として生きていこうと思います。

そんなわけでですね、「小綺麗になりたい!」と意を決して、人生初の「トリートメント」ってやつをしてもらいに美容院に行ってきたんです。

美容院に赴いて、眼前にめちゃくちゃデカイ鏡が置いてある椅子の前に着座。いつも指名しているスタイリストのお兄さんが「今日はどのような感じにしますか?」と聞いてきます。
ここですかさず「ナガサハコノママデナカヲツーブロックニシテモラッテトリートメントヲオネガイシマス」と呪文を唱えます。何言ってるかわかんないですね。僕もわかんないです。

ちなみになんですけどスタイリストさんを男性で指名しているのは技術がどうこうというより、女性に僕のような汚物の頭髪を触らせてしまうのは忍びないからという理由です。忍びないというか、罪悪感で死にたくなるんすよね。
女性のスタイリストさんだと「ごめんね、こんなおっさんの髪の毛を切るために美容師になったわけじゃないよね。ごめんね」ってなるこの罪悪感が、男性だとまだ「わかります。こんなおっさんの髪の毛触りたくないっすよね。すいませんねほんと。でもほら、ビジネスだから、ビジネス(手のひらを上にして人差し指と親指で丸をつくりながら)」って思えるんすよね。

そんで僕、上に書いたとおりトリートメントって初体験なんですけど、なんかすげーランクがあるんですね。
なんか4つくらいランクがあって、一番下は2,000円くらい。一番上は10,000円くらいすんのな。ちょっとマジでハゲるかと思いました。ハゲてトリートメントとか必要なくなるかと思いました。
「うおー10,000円もすんのかーマジかー」って震えてたらスタイリストさんが「この真ん中の4,000円くらいのもので良いと思います。ぶっちゃけ上2つはカラー入れたりする人が必要なものなので」ってアドバイスしてくれました。
まじでこの人菩薩かと思った。これ絶対ネットワークビジネス界隈だとなんかよくわからないセールストークとかゴリゴリにやって1番上のランクのやつ売り込んでくるでしょ。いたいけな薄汚いアラフォーから10,000円搾取しようとするでしょ。あいつら金の亡者だから。
それに引き換え、ほんとこのお兄さん神。一生指名するぅ。

そんなわけでこの聖☆おにいさんが僕の頭髪をガリガリにツーブロック化。なんかナスみたいな髪型にしてくださって、いよいよ人生初のトリートメントへ。

ここで「担当を替わらせて頂きます」と、聖☆おにいさんは別のお客さんのヘアカットへ。僕のところには別の男性スタイリストさんが付きます。

でね、この替わったスタイリストさんがね、めちゃくちゃ若い子なんですよ。
もう「え? 10代ですか?」みたいな感じで、めっちゃフレッシュな男の子なんですよ。まあ専門学校は出てるんでしょうから20台ではあるはずなんですけど、なんかもうめっちゃかわいいの。若干たどたどしいっていうか、慣れてない感がすごいんですよ。そこがまたかわいいんすよ。ブヒヒィとか言いたくなるんすよ。

んでその子と「よろしくおねがいしまーす」とか挨拶してね、いざトリートメントってなったんですけど、僕トリートメントってどういうものかイマイチわからなかったんですけど、なんか要はトリートメント液を髪につけて、温かい蒸気でなじませていくってものなんですね。

最初の方はまだ、蒸気を当てるときに「熱かったら仰ってくださいね」とかいう言葉にきゅんとしちゃったりして、かわいいなあおいとか思ったりしてたんですけど、施術が進んでいくとちょっとこう、「アレ?」ってなってきましてね。
ていうのが、トリートメント液を髪になじませるために手でもってこう、手ぐしのような感じでなじませていくんですよ。素手で。
小汚いおっさんの気持ち悪いロン毛を、こんな若いフレッシュな男の子が、す、素手! 素手で! なじませていくんですよ!!

いや~もうなんかね~、申し訳なくて申し訳なくて。
女性の髪の毛を施術するってんならほら、なんかこう、別にいいじゃないですか。ワンチャン綺麗なお姉さんの髪の毛をトリートメントしていくとかだったら「全然むしろやりたいです!」みたいなもんじゃないですか。お姉さんも「あらかわいいわね坊や。学校出たばっかりなのかしら?」みたいなもんじゃないですか。夜の生活もトリートメントしましょうか? みたいなもんじゃないですか。

それが小汚いおっさんの気持ち悪いロン毛をトリートメントしなければいけないんですよ。こんな前途洋々なかわいい若い男の子が、いくら金のためとはいえ、こんな駅前の吐瀉物みたいな! おっさんの髪の毛を! す、素手で!!
ほんとすみません。トチ狂ってトリートメントとか言い出してほんとすみませんでした。こんなおっさんの髪の毛を素手で触らないでください。性病とかになるかもしれないんで素手ではやめてください。もう今からでも手袋してください。排水溝洗うときに使うみたいなゴム手袋とかしてください。そう、あの分厚いやつ使ってください。

ほんともう罪悪感で死にたくなりました。
いや、僕なんかよりトリートメントしてくれた男の子のほうが死にたくなってるはず。
「こんな薄汚いおっさんの髪の毛をトリートメントするために美容師になったわけじゃないのに……」ってなってたはず。
ほんとすみません。生きててごめんなさい。

そんな感じで死にたくなって、ションボリしながらトリートメントを終えて、お会計をして美容院を出たらめちゃくちゃ雨が降ってるんですよ。
天気予報じゃ晴れマークだったはずなのにめちゃくちゃ雨が降ってるんですよ。

きっとこれは泣いてるんだ。
あの子の代わりに、空が泣いてるんだ。

これはもうそういうことだ。天罰だ。
あんな若い男の子にこんな汚物の髪の毛を触らせてしまった罰なんだ。

あの子の涙に打たれながら、ビッショビショになって帰りました。
「これは罰だ……罰なんだ……」とつぶやいて、雨の日に丑の刻参りする人みたいになりながら。

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日記

Posted by たくろう